人気ブログランキング | 話題のタグを見る

栄通記

sakaidoori.exblog.jp
ブログトップ
2012年 12月 02日

1896) ①「春陽会 道作家展 24th」 時計台 終了11月26日(月)~12月1日(土)

春陽会 道作家展 24th  
        

 会場:時計台ギャラリー2階ABC室
      中央区北1西3 
       札幌時計台文化会館
      (中通り南向き)
     電話(011)241-1831

 会期:2012年11月26日(月)~12月1日(土)
 時間: 10:00~18:00 
      (最終日は~17:00まで。)

ーーーーーーーーーーーーーーーーー(12.1)

 2階全室を使っての公募団体展。
 一番狭いC室が面白かった。その部屋から記します。


1896) ①「春陽会 道作家展 24th」 時計台 終了11月26日(月)~12月1日(土)  _f0126829_2333083.jpg



1896) ①「春陽会 道作家展 24th」 時計台 終了11月26日(月)~12月1日(土)  _f0126829_23332514.jpg
     ↑:(以上、C室。)


 (以下、敬称は省略させて頂きます。)


1896) ①「春陽会 道作家展 24th」 時計台 終了11月26日(月)~12月1日(土)  _f0126829_23374977.jpg
     ↑:新出リヱ子、「対話」・F130。


 新出リヱ子らしい作品だ。明るくって元気、前進前進、皆なで進めば恐くない世界だ。
 最近の新出リヱ子作品の凛とした濃密な世界が好きな人は、焦点も定まらないうるささに戸惑うかもしれない。確かに勢いは随分と違うが、構図などは以前と同じだ。今回の横長を縦長にして、中央に一塊の構図としてみれば、以前の世界からは遠くない。内向的なものから外向的視点になった。

 最近はめっきり個展をしなくなった。代わりに、道展、春陽会と公募展中心の活動だ。それは、個展での無手勝流の元気発散を封印して、少数の大作をじっくり描き込む作業であった。目標の筋目は公募団体会員になることだ。公募展ではあるが、その中で魅力あるものは何かということを探る作業でもあった。明快に言い直そう。認められるにはどういう絵にすればいいか、だ。自分の人生経験を絵画に織り込ませながら、他者の目を意識する。

 「認められる絵を描く」そんなのは画家としては邪道だ、という意見もあろう。僕はそうは思わない。過去に大成した画家たちは、間違いなく「認められる」という他者の目を意識し、それを自覚して自己の絵画に何かを取り入れた。自分の世界と他人の視線の融合が、作品を大きくしたといえよう。

 今、彼女は道展、春陽会とあいついで会員になった。ひとまずの目標は達成された。そして次なる目標への一歩が、今回の作品だ。
 
 今作は、「より自分らしい世界を表現すること」を課題にしたと思う。「こだわりりなく絵画に向かう。花にもなろう、種にもなろう、輝く川を流れよう、産みの苦しみを昇華させ、より楽しい世界を創造しよう」ということだろう。
より一層のエネルギッシュな活動を期待しよう。



1896) ①「春陽会 道作家展 24th」 時計台 終了11月26日(月)~12月1日(土)  _f0126829_23381750.jpg
          ↑:折戸朱美、「海をわたる風」・F80。


 あどけない船が描かれている。淡い姿ではあるが、強い気持ちの船だ。そして海。水平線あたりは濃い青ではあるが、本当に水平線だろうか?その向こうは色付いてはいるが、それは空?それとも陸地の模様?遠い海の向こうを見て欲しいという画家の願いだ。
 そこから風がくるという。船もくるだろう、他にも何かが誰かがくるかもしれない。
 そこに風が向かうという。わたる風だ。風と一緒に、船も何かも誰かもわたるかもしれない。

 そんなロマンやメルヘンが淡い蜃気楼のような世界で語られている。見る人それぞれに物語が生まれるだろう。



1896) ①「春陽会 道作家展 24th」 時計台 終了11月26日(月)~12月1日(土)  _f0126829_0285311.jpg
     ↑:田中緑。左から、「雨の風景」・F100。「海辺にて」・F30。


 左側の作品は構図的に明快で公募展的作風だ。右側の作品は、心象気分と、草むらの存在感や空気感とを重ね合わせていて、本来の田中緑の姿だろう。何よりも、自然に絵画に打ち込んでいる感じだ。だから、右側の作風に画家が満足しきっていたら、春陽会という公募団体で絵画研鑽をする必要がない。しかし、何故だかはわからないが、現状の自己の画風に満足できぬものがあるのだろう。それを探す過程が左側の作品だと思う。
 ならば、もっと失敗せねばならないだろう。この大作の課題をしっかり見定めて、そこに集中する。輪郭線を強調させたいのか?具象性を鮮明にしたいのか?光と影なのか?明と暗のコントラストなのか?緑系以外の色を自由に使いたいのか?その辺りがこの絵でははっきりしない。絵が最終段階になり始めた時に、「上手く仕上げよう」になってしまった。

 田中緑の世界は、輪郭定まらない世界だが、「強さ」が絵を支えている。その自己の「強さ」が何なのかがわからないのだろう。その強さの意味、自分自身の再発見のために大作に向かうのだろう。絵画とは悩みと決断を行ったり来たりするのだろう。




1896) ①「春陽会 道作家展 24th」 時計台 終了11月26日(月)~12月1日(土)  _f0126829_0501497.jpg
     ↑:河合春香、「ありふれた部屋」・F100。


 「ありふれた部屋」には見えない。確かに何の変哲もない自分の部屋かもしれない。その部屋に不満でもあるのか、激しく襲いかかる。それもピンクでだ。ピンクが凶器になりつつある。とても「色爛漫の幸せ気分」には見えない。
 それにしても、絵に打ち込む姿勢は素晴らしい。もっとわかりやすいロマンティックなものを表現していると思っていたが・・・間違いなく、悩める「青春画」だろう。



1896) ①「春陽会 道作家展 24th」 時計台 終了11月26日(月)~12月1日(土)  _f0126829_0581956.jpg
          ↑:米澤史子、「崩」・F120。


 この絵も激しい。しかも勢いを失わずに緻密だ。画面に散りばめられたのは、壊れた建物と思いこんでいたが、霊柱でもあるのか?実際の絵画では、絵の迫力で気付かなかったが、下の方に灯る蝋燭が描かれているみたいだ。もしそうなら、画面の白は幾百千万のかがり火になろう。
 おそらく、昨年の3.11大震災がモチーフにあるのだろう。壮絶な鎮魂画だ。


 意外にも長くなったので②に続く。

by sakaidoori | 2012-12-02 16:38 | 時計台


<< 1897) ②「春陽会 道作家...      ※ 栄通の案内板  12月(2... >>