1854) 「尾形香三夫 陶芸展」 さいとう 10月30日（火）～11月4日（日）

　　
尾形香三夫 陶芸展　　　　


　会場：さいとうギャラリー
　　　　　中央区南１条西３丁目１
　　　　　　ラ・ガレリア５階
　　　　　　（北東角地。
　　　　　　１階が日産のショールーム。）
　　　　　電話（０１１）２２２－３６９８

　会期：2012年10月30日（火）～11月4日（日）
　休み：月曜日（定休日）　
　時間：１０：３０～１８：３０
　　　　　（最終日は、～１７：００まで）

ーーーーーーーーーーーーーー（10.30）






























　煉り上げ技法による巧みの世界だ。
　作品の色模様は着色したものではなく、色の違う粘土層の重なりによるものだ。だから、色部分を削っても削っても金太郎飴のように同じ色が浮き出てくる。作品を見てもわかるように、精密に色幅は計算されているから、偶然性による美学を追究してはいない。まさしく、日本的な工芸としての技を追究したものばかりだ。

　それは間違いなく素晴らしいのだが、僕はその模様に魅入っている。渋く押さえられた色の波、その連続、終わりなき循環運動、いつしか、その模様群がアップダウンしながら異様に目に迫る！！心地良さを逸脱して、焦点の合わぬ世界に脳は拒否反応を起こし、それでも見ようとする意欲を押さえることはできない。焦点の合わぬ能面で長時間一点を見つめたならば、気狂いが生じるという。おそらく、それと同じ効果を尾形・練上波長は引き起こしているのだろう。

　この、「焦点の合わぬ美学」に惚れ込んでいるのだが、今展は落ち着いて見ることができた。氏の作品を見続けているから、とうとうその幻覚模様にも慣れたのかと思った。ところが、「今回はそういう作品を出品していません」とのことだ。いつもと同じような模様に見えるのだが、どこかを微妙に調整して、人の生理に順応させているのだろう。それは工芸品としては頷けることではある。むしろ、工芸性を拒否するかのような作品も手がける氏の感覚こそ不思議というべきか。
　今展は「生理的幻惑さ」は押さえられてはいるが、「美学的幻惑さ」はいかんなく発揮している。

　それにしても摩訶不思議な模様だ。日々精進の技が、その不思議さを支えているのだろう。技量に関しては僕には語る能力はない。その模様をこれからも見続けよう。