2012年 09月 30日
池田緑・展 日を編み、言葉を紡ぐ。 会場:STVエントランス・アート 中央区北2条西2丁目 STV北2条ビル 1階ホール (南進一方通行の西側のビル。) 電話(011)207-5062 会期:2012年9月17日(月)~10月7日(日) 時間:月~金 9:00~18:00 土日祝 9:00~16:00 ーーーーーーーーーーーー(9.22) 淡々と進む日々の連続、連鎖、連関・・・その日常の蓄積を鮮やかに過剰に輝かせている。七色のリボンの国にしている。 (以下、敬称は省略させて頂きます。) 池田緑は1943年4月3日に生まれた。出生地は朝鮮、場所は陸軍官舎。プラスチック・テープには、彼女の誕生日「1943.4.3」から始まり今日に至る日付が刻印されている。居住地毎に色分けされ、連続した数字の日付ラベルが続いていく。1995年からの作業だ。この「日付シリーズ」、垂れ状のものと円筒に入れられたものと2種類ある。「過去から今日までを紡ぐ」というのであれば一種類で充分と思う。しかし、その過剰な精神は一つでは収まらないのだろう、二つ同時進行だ。 作者の言葉を待つまでもなく、「自分探し、自己確認」の行為だろう。出生地が植民地・朝鮮であり、引き揚げ者であり、父親がシベリア抑留者だ。幼き頃の両親は苦労されただろう。その中身は知る由もない。そういう作品ではない。生い立ちや生涯の中身を観る者に感情移入・共感・共有させることを欲してはいない。むしろ、作品の煌びやかさは生きた中身を問うことよりも、生きたことを、いま「在る」ことを讃歌しているようだ。 もし作家が目の前にいたならば、「綺麗ですね、この作業の情熱は凄いですね」という意外にはない。まったく、作家と語らうには何て中身のない反応だろう。(情けない!)だが、作家とて、それ以外の言葉を他者に期待しているだろうか? 情念と知性をもテープに絡ませ、自問自答を続ける池田緑。 確かに色の交替という断絶はあるが、不連続ではない。無意味な連鎖ではない。もし作品自体が自動運動したならば、刻印は順番通りでもテープ同士の繋がりは絶たれ、ランダムに飛び交うかもしれない。部屋中がテープで埋め尽くされるかもしれない。過去の一コマ一コマの刻印が好き勝手に目の前に飛び込んでくるかもしれない。「2054.4.3」というラベルも出てくるかもしれない・・・。 綺麗に制御されたテープ達、意味ある順番、美しき一コマ一コマを見ていると、私自身の生い立ちへと意識は移る。「あー、テープ達よ、乱舞しておくれ、過去も未来も忘れさせておくれ、リボン王国という今を見させておくれ」とつぶやきたくなる。 それにしても輝くテープだ。なぜ女性はかくも綺麗な姿で内省できるのだろう?まぶしい存在だ。 テープがはじけ飛ぶような美しさだとしたら、吸い込まれそうな優しき色の本がある。白色、黄色、青色とはにかみながらの色自慢。薄い本、厚い本、少し厚い本と楽しそうに背比べ。 それらは作家が十勝の新聞に書き綴ったエッセーをまとめたものだ。名付けて、「33の日」、「66の日」、「444の日」。17年分の繋がり行く文字の世界だ。嬉しいことに手元に黄色い本と青い本がある。手にも目にも優しき姿だ。文字すら愛でたくなる。
by sakaidoori
| 2012-09-30 09:01
| STVエントランスホール
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丸島 均。札幌を中心に美術ギャラリーの感想記、&雑記・紹介。写真は「平間理彩(藤女子大学写真部OG) 『熱帯夜』組作品の一点」。巡回展「それぞれの海.~」出品作品。2018.8.30記。2577)に説明有り。 by sakaidoori カレンダー
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