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栄通記

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2012年 05月 24日

1765)④完「阿部典英の全て ~工作少年、イメージの深海を行く~」 近美 終了・4月7日(土)~5月6日(日)

    
○ 阿部典英の全て 

         工作少年、イメージの深海を行く
   

    
 会場:北海道立近代美術館
      中央区北1条西17丁目   
     電話(011)644-6882

 会期:2012年4月7日(土)~5月6日(日)
 時間:9:30~17:00
     (入館は16:30まで。)
 休み:平日の月曜日(定休日)、5月1日
 料金:一般 1000円 高大生 600円 小中生 300円 

 主催:当館 北海道新聞社 

 ※ イベント多数 

ーーーーーーーーーーー(5.4)

 1731)①、1732)②、1733)③の続き。
 (以下、敬称は省略させて頂きます。)


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 ホールに展示されていた最新作だ。良いですね~、この馬鹿さかげん、このド迫力!

 何年か前にも芸森で彼をとりあげていた。だからだろう、「もうテンエイはいい。何度も何度も公共美術館で税金をかけて開く必要はない」という声を耳にした。当然の批判だろう。こういう批判がこないようでは、アベ巨大ムシも欠伸をするばかりだ。その言葉は美術館への批判も含んでいるだろう。もし、言い放った方が同じ表現者ならば、自分が選ばれないことへのジェラシーもあるかもしれない。

 その言葉が正当とも思わないが、間違っているとも思わない。
 現在では美や表現の価値基準は千差万別だ。だから、公共のお金を使った企画展示に、万人の賛成を得るのは無理だ。求めること自体が意味をなさない。だからといって、不満や批判が出てこないことほどつまらないことはない。誰かの「美」を否定はしないが、「美の選定」となると、侃々諤々(かんかんがくがく)が当然な姿だろう。

 しかし、今展に関しては阿部典英の足跡と「今のエネルギー」は素晴らしいと思っている。
 

 今回で最後です。まだ載せていない最後の方の作品紹介になります。


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 前にも書いたが、典英ワールドを3本の柱で理解している。
 開けっぴろげなユーモア精神、女大好きという性表現、社会に視野をすえた宗教性、だ。

 上の写真の空間及び作品群は、一目で仏像と儀式を連想する。氏の中の「宗教性」が誰に憚ることなく表現されている。響文社発行の図録の中で、アフガンへの思いが創作動機だと語っている。9.11事件と、アフガンの仏像破壊、アメリカを中心としたアフガニスタン戦争が背景にあるわけだ。
 それは間違いないのだろう。だって、作家自身が言っているのだから。しかし、この世界的事件は画家のイメージが具体的形態や作品として昇華されただけである、と思っている。今、「だけ」と書いた。しかし、この「だけ」が大事だと思っている。感受性というアンテナを常に研ぎ澄ませていなければならない。その氏の網にかかったのだ。
 更に言えば、当時氏は60才を越えている。人間として表現者として、老境の階段に入ったのだ。それはある意味で危険な年齢であり、怪しげな精神状態に陥る可能性もある。マンネリ、惰性という危機であり、体力の減退を身にしみて感じる危機だ。死を妄想する時もあるかもしれない。既に道内では功成り名を遂げた美術家が、その名声を維持するか、そういう事とは次元を異にして作品の深化に努めるか、・・・僕は世界事件を阿部典英流に誤魔化すことなく向き合い料理したのだと思っている。
 
 しかし、いかに精神性がたちこめた空間や作品を作ろうとも、それらが性やユーモアで包まれて生真面目オンリーではなかろうとも、やはり氏は社会的リアリストという作家ではない。大風呂敷で社会にモンクを言いたそうな少年なのだ。それがホールの巨大ムシだ。
 だが70歳も過ぎた方だ、少年とは失礼だ。近美も画家におもねったタイトルを付けたものだ。だって、少年では女と寝れないではないか。それは氏に作品を作るなというより酷な話だろう。

 質実剛健、豪華絢爛、奇想天外、天下泰平な作品を今後も期待しよう。




 いよいよ作品掲載も最後に近くなりました。
 出口へのプロムナードです。


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 「テンエイより愛を込めて」でしょう。


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  「テンエイ郷土資料館」ですね。


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 こちらは言葉通り「宝物館」です。


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 ある詩人は恋人を想い、食卓のサンマにむせび泣いた。
 涙はテンエイには似合わない。カッパに恋しよう、鹿だってライオンさんだってキリンさんだって、皆な皆な恋しよう。


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 最後の作品です。これが最後とは意外な感じがする。
 やはり自画像と見るべきでしょう。哲人、あるいは仙人のような面相だ。




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     ↑:(ワークシップ参加者の作品。)


 出口を出て、狭い渡り廊下の壁にババーンと作品があるではないか。付け足しのような展示だが、付け足しを喜んでいるような元気盛んな姿だ。

by sakaidoori | 2012-05-24 12:29 | ☆札幌・近代美術館


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