2011年 11月 06日
○ Apporoach デザインとアートの接近 伊藤千尋 (プロダクトデザイナー) 藤沢レオ (彫刻家) 村田佳彦 (漆作家) 山本雄基 (画家) Julia lohmann (デザイナー) 会場:Room11 (アート・スペース+カフェ) 中央区北3条東5丁目355 (北海道ガス社屋の向側。北向き。) 電話(011)208ー1010 会期:2011年11月1日(火)~11月13日(日) 休み:11月7日(月) 時間:11:00~19:00 企画:本間真理 ※ ギャラリートーク & パーティー ⇒ 11月5日(土) 15:00~ 500円(1ドリンク付き) 出演・伊藤千尋 藤沢レオ 山本雄基 ※ トーク終了後も、お飲み物と軽食を用意しています。 ーーーーーーーーーーーーーーー(11.2) (以下、敬称は省略させて頂きます。) ○ 山本雄基の場合。 今回は控えめな色具合だ。偶然の出品ではないだろう。意図的に鮮明な色味を抑えた。 色で遠慮した分、地味で派手な大作を用意した。一番下の作品がそれだ。円と円の隙間は黒味が強い。大きな大きな円の中に、小さな小さな日の丸だ。 青年・山本雄基は自信をもっていろんなことを試みている。一方通行の明るさで迷いがない。まだまだ色の強さの手加減は修得中だが、手応えを感じる今日この頃だろう。 「まる」は明るく幸せ気分な形だと画家はいう。それは違うだろう。「まる」と、その形の増殖模様となれば、恐怖やグロテスクさにもなる。全ては画家の美学と価値観が決めることだ。 「まる」に託して完全無欠な美しさと満足を求める山本雄基。それは見果てぬ夢かも知らない。その夢が彼の作品をデザインにするかもしれない。デザインからは遠いところから出発し、現に今もデザインなどは一顧だにしていないだろう。だが、間違いなくデザインに近いところに作品はある。「まる」の暗部も見つめつつ、それでも清々しく拡がる山本ワールド、そういうものを期待したい。それがデザインかアートかは他人が決めればいいことだ。作家は己に正直に進めばいい。 ○ 藤沢レオの場合。 「線の人・藤沢レオ」だ。その線が骨格か輪郭かは分からない。だが、「一本の線で全てを表現したい」、そういう作家だと判断している。その線とは、間違いの許されない工芸職人の巧の世界、あるいは日本画の中の描き直し不能な線跡といえる。それは美学としてだが、画家自身の体質的なものかもしれない。自己の存在理由としての屹立する一本線だ。 画家はトーク時に「小品は苦手だ」と語っていた。僕は、その線の細さが大作の弱さになっていると思っている。コンパクトな小品は生娘のような緊張感がある。初々しさがある。 ①や②の作品など、モチーフは違うが夢そそる宝箱だ。線が立体としても膨らみ、重層的に夢を育んでいる。①は線の中の空間が暖かい。②は影を意図的に作り、その作為性人為性が微笑ましくもあり優しい。 さて、③がアートマンとしての課題を露呈している。彼は「生死」を問うていたのだ。僕は「線の人」と早くから決め込んで彼の作品を見ていた。大振りの作品のひ弱さが気になっていた。今作は何かのエスキスのようだ。そのタイトルとの関係では語れないが、抽象作品として興味深い。つまり、小品としての「考える人」段階は良いのだが、大きくなると思弁性が勝ちすぎて造型性が弱い。日本美術の歴史は「無」には強いが直裁的な「生死」には疎い。西洋の「メメントモリ(死を思え)」的美術品には圧倒される。 圧倒するわけでもない等身大の強さで「生死」を表現したいのだろう。派手にならず自分に言い聞かせて、倫理的作品の成就を願っているのだろう。成功を祈る。 ○ 伊藤千織の場合 デザインで活躍されている作家だ。 トーク時に作品をスライドで見ることができた。「線の人・藤沢レオ」とは違って、フックラとしたボリューム感を特徴としているようだ。 木製品などが多いようだが、今回は紙だ。分厚めの紙を手際よく切り、厚みを出して光と楽しんでいる。月桂冠のようだ。 彼女の作品群は、窓際を独占はしていたが、あたかも他作品とは没交渉のような感じがした。その作品性に注目するのならば良い展示だとは思う。だが「アプローチ」となると、一人だけの世界になっていて今展の主旨とは少しズレを感じた。絡みが欲しかった。 ○ Julia Lohmann の場合。(ユリア ローマン、1977年 ドイツ・ヒルデスハイム生まれ。現在、ドイツ・ハンブルクで活躍。) 一人の外人の作品がちょっと見慣れぬ空気を作った。良いですね。 数年前、札幌にレジデンスとして滞在した。その折りに企画者の目に止まったのだろう。(多くの外人作家が札幌に来ている。その大半を知らないとはどうしたことか。意欲的に関わらない僕が悪いのか、情宣不足の関係者が悪いのか、互いに反省せねばならない。) 素材が「日高コンブ」というのがユニークだ。色や形が気に入ったのだろうが、それだけではないようだ。自然との関わりを自己のデザインの中に取り込みたいのだ。プラスチックという化合物ののっぺんだらりとした物をデザイナーは好む。その無機質性や色を自由に操れることが良いのだろう。何と言っても没個性なのが最大の理由かもしれない。 ユリア・ローマンは無機質性に距離置いて、文明・社会再考の手段として自然物をデザインかしている。 間違いなくデザイン化する時に、自然の肉声の何かがそぎ落とされるだろう。かわりに作家のデザイン観と文明観が挿入されるだろう。上手く行くことを祈ろう。 僕自身はコンブであることには驚かない。コンブという肉体の透過性と、その美しさに感心した。
by sakaidoori
| 2011-11-06 21:50
| Room11
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丸島 均。札幌を中心に美術ギャラリーの感想記、&雑記・紹介。写真は「平間理彩(藤女子大学写真部OG) 『熱帯夜』組作品の一点」。巡回展「それぞれの海.~」出品作品。2018.8.30記。2577)に説明有り。 by sakaidoori カレンダー
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