1544)「村上知亜砂 [Gloomy cocoons ～陰鬱な繭]」 JRタワーARTBOX 2月19日（土）～5月31日（火)

○　[Gloomy cocoons
　　　　　　　～陰鬱な繭]　

　　　　　村上知亜砂　　
　　

　会場：ＪＲ札幌駅東コンコース・ＪＲタワーＡＲＴＢＯＸ
　　　　　中央区ＪＲ札幌駅構内
　　　　　（地上東コンコースの西壁面。東改札口の南側）
　　　　　問合せ・ＪＲタワー展望室アートチーム
　　　　　　　　　　電話（０１１）２０９－５０７５

　日程：2011年2月19日（土）～5月31日（火）
　　　　　（会期中無休）
　時間：８：００～２２：００

ーーーーーーーーーーーーーーー（5.8）











　ここでの作品は、道行く路傍の人との関わりが面白い。つまり、作品そのものは通行人や場にとっての肴だ。そして、作品と路傍人との「マッチング風景」が展示の目的の一つと言っていいかもしれない。
　今作は遠目には何が何だかわからない。黒くて暗い塊だ。気になる路傍人は足を止めて見る。食い入るようにして見る人もいる。なぜだか、共通した表情になりがちだ。口をもんがり開けた顔は語っている、「これ、な～に？ねぇ～、何に見える～？」


　僕らも近づいて作品を詳しく見ることにしよう。






　う～ん、残念ですがガラスが反射して、これまた何が何でかわからない。仕方がない、想像の伴侶として部分部分の拡大写真を載せよう。これらを繋ぎ合わせて村上知亜砂の夢見る世界を築くことにしよう。











　一見薄気味悪そうだが、毛が可愛く固まっている感じだ。子供のロクロであり屍に似せての作品、その黄泉の姿であろう。鎮魂歌風である。やさしくはあるが、すこぶる観念的な世界だ。
　それよりも、一見グロテスクで汚い作品が、この場所では何ともミスマッチ的存在に思えたことの方に、僕の意識回路は注意を向ける。このミスマッチは作家の意図かというと、そうではないと思う。作家は一所懸命に何かを訴えたくて、「どうかどうか私の作品をしっかり見て下さい。私の創作意図が分かりにくければ、備え付けのＤＭの『作家の言葉』を読んで下さい」と、真剣そのものだ。だから、奇異をてらって通行人を立ち止まらせようという作為性の強い作品ではない。
　今展のミスマッチは「作品と通行人」にあるのではない。ほとんど見る人の意識を顧みない「我が儘な作家と、その子供のような作品と、見る気がなくて目にした路傍人」の三者の無縁な関係だ。その関係が結果的に面白いものなら良いのだが、僕には全てが砂上の世界のようで、一つの白昼夢といってもいい。だが、演出ではなくて我意で白昼夢を作りきった作家にどんな言葉を贈ればいいのだろう？余裕の無さを攻めるべきか？三段ロケットのような爆発力をもっと持つべきだと鼓舞すべきか？

　作家の他者を眼中に置かない古典的制作態度と、路傍の集団である近代的空間、そのことを確認した展示であった。


　以下の写真は付録です。ガラスの関係で作品をチャンとお伝えできない。ならばと、そのガラス効果を楽しんだ写真風景を載せます。


















　　　１９７３年　大阪生まれ
　　　１９９５年　成安造形短期大学
　　　　　　　　　　造形芸術学部デザイン専攻科卒業
　　　２００２年　北海道に移住