2011年 04月 21日
○ 常設展 「記憶と現在ーそのⅢ」展 会場:テンポラリー・スペース 北区北16条西5丁目1-8 (北大斜め通りの東側。 隣はテーラー岩澤。) 電話(011)737-5503 会期:2011年4月12日(火)~5月1日(日) 休み:月曜日(定休日) 時間:11:00~19:00 【展示作家】 多数。 ーーーーーーーーーーーーーー(4.20) 当館に足繁く通われている人にとっては見慣れた作品が多いかもしれない。初物を見る新鮮さは無いかもしれない。確かにそうだろう。だが、知った作品を幾度も見る喜びもある。 ついでに立ち寄るには当館は不便かもしれない。確かにそういう場所ではない。 何より、個性的なキャラクターの当館オーナー・中森氏でもある。氏を避けて足が遠のいている方も居られるだろう。それはそれで仕方がない。が、当館ならではの美術表現や、空間を見の逃したのは間違いない。 常設展ではあるが思うところが多々あった。会場風景を中心にして記しておきます。 1階の風景から。 ![]() ![]() ![]() 目を2階にに転じて ![]() ![]() ![]() ![]() 名の知れた著名な作家を含め、それなりの多数の作家が見れる。オーナーが懇切に解説してくれます。 以下、栄通風に記していきます。 テーマは二つ。 今時の大震災に絡んで、作品や作家を見直すこと。出身地、川、海、核エネルギー、運輸、瓦礫などなど。例えば村上善夫氏は岩手県出身、鯉江氏の広島の土による焼き物だ。 物故者を含めた旧テンポラリー・スペース時代という過去、新テンポラリーの新たな作品という今、その関わりを見つめること。 川や核などのテーマ性と、新旧という時の流れ、そこには時代や「今」に対する当館固有の文明批判が通奏低音のようにして流れている。「今」と言っても作品は常にワンテンポ後れて人の目に触れる訳だから、常に過去性を背負っている。そういう意味で美術(視覚)作品は過去の集積であり、時間の蓄積という篩(ふるい)にかけられる。後々まで残った物が「良き作品」という社会的価値を得るのだが、しかし、社会的価値が価値尺度の全てではないであろう。色々な人が色々な試みをして、多くが残骸のようにして忘れ去られてしまう(津波の後の瓦礫・残骸の姿、事実の赤裸々さは美術行為を越えている)。「忘れ去られる」、そういうものだと思う。ところが、時折「思い出」のようにして人の記憶の川から立ち現れる時がある。そして芽が出て花が咲く時がある。もちろんその花はいつか枯れる。 今展はテンポラリー・スペースという蓄積の場でもある。 「美術作品」には何らかの秩序がある。その秩序はその時々の反映であろう。その価値観がどれだけの重みと軽みを持っていたか?今となっては瓦礫の山かもしれない。文明とは秩序にしがみつくことかもしれない。その「秩序」が壊れる時がある。「ベルリンの壁」という秩序、「夫婦、人と人の関係」という秩序、それが壊れる。恐ろしい事だ。有形無形の財産の崩壊と喪失、存在の否定にも繋がりかねない。そんなことは考えたくない。津波の後はそれを目の当たりにさせた。原子力事件は解決不能の自体を赤裸々にさせた。解決不能なるが故に、いつまで問題としてそこにあるのだろう?「忘却」という人の生きる知恵が間違いなく働くだろう。・・・。 当館に刺激を受けて、当展から離れた言葉を書き進めてしまった。きりがない。 遅まきながら、個別作品を何点か載せます。 ![]() ![]() 会場正面の鏡面作品。 一原風にステンレスの表面に版画作品が転写されている、直接に表面を火で傷めた痕跡が残っている。だが、それらは歪められた表面の飾りでしかない。道路を走る車が写される。デカ顔になって瞬時に消えていく。万華鏡のようにして風景を「虚」にする。そこに時折激しい光りが当たる。光背と言うべきか、破壊の瞬間と言うべきか、その鏡面の世界に頭が揺れる。そこは間違いなく嘘の世界だ。何が何だか分からない嘘の世界、思わず笑ってしまう。これだけを見る為に当館に行ってもいい。 ![]() 手の上、何という存在の軽さ。何というジャコメッティーの重さ。 手の上の人、それは仏教の世界であろう。全ては仏の手のひらの上。仏様は全てをお見通しという訳だ。だから、人は何でもして良いとも言える。だから何なのよ、と無視することもできる。 ![]() 「自我の人・野上裕之」の飛ぶ皮手だ。火で焦げている。きっ野上青年はジャコメッテイィーが好きだろう。彼を越えたいと思っているだろう。だから空を飛ぶのだ。でも彼は降りるだろう。優しいから。 ![]() 絵画作品の撮影に失敗。線と青が印象的、何より画面を覆う緊張感や空気感だ。 ![]() ![]() ![]() ![]() 石狩に座礁したベトナムの輸送船。綺麗な青だ。存在をビシッと見つめている。 ![]() 結ばれ。 ![]() 仲良きサルだ。 当館は「川」を大きな精神的支柱にしている。 境界、深淵、流れという具体的形を愛し、文学的比喩暗喩としても振る舞っている。思想優位の男性的川だ。 悠久の流れ、激しき今だけの流れ、そういうロマンティシズムとしてもある。肉感的な女性的川だ。 男女織りなす川を当館で楽しんで下さい。
by sakaidoori
| 2011-04-21 13:04
| テンポラリー
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![]() 丸島 均。札幌を中心に美術ギャラリーの感想記、&雑記・紹介。写真は「平間理彩(藤女子大学写真部OG) 『熱帯夜』組作品の一点」。巡回展「それぞれの海.~」出品作品。2018.8.30記。2577)に説明有り。 by sakaidoori カレンダー
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