2011年 02月 14日
○ 専門学校 札幌ビジュアルアーツ・写真学科2年 卒業制作作品展 ーーーーーーーーーー(2.10) (1462②の続き。) (以下、敬称は省略させて頂きます。) 二人一組で6名載せます。 ・ 強く対象を見る撮影者 ①はイタリア人の作品。札幌、小樽、函館の市場とその変化がテーマ。 市場と言うよりも、昔懐かしの雑貨屋さん、そんな感じだ。それは懐古趣味に繋がるのだが、撮影者は懐古など眼中になく強く被写体を撮っている。この強いリズムには恐れいいった。店先と台所?という微妙な組み合わせも不思議だ。 店内を撮ったというより、職住一致の生活スタイルを露わにして、そのゴミゴミさと日々のバイタリティーをつかみ取った感じだ。この暮らしぶりを通奏低音にして、あたかもこのスタイルが永遠永久に続くかのような錯覚を写真は与える。人間臭さとともに、生活の詩情が漂っている。見た目の動きはないが、強くリズミカルに音楽も流れている。 ②、木の存在力、生命力に着目して、堂々とそれに立ち向かっている。この木々は擬人化されたものでもあろう。撮影者自身の投影でもあろう。 もしかしたら撮影者は社会人になる人かもしれない。既にそこにある自然、そこに参加する自身を木に喩えて、力強く闊歩するという宣言かもしれない。健闘を祈ります。 ・ 人物・・パ-トナーと群れ。 お二人とも会場に居られて話を伺った。(ありがとうございました。) ①は初めての東京訪問時の「東京ひとむれ・写真集」だ。 この作品の最大のポイントは、誰彼構わず相手の許可を取らずに写真に収め、堂々とここに出品していることだ。エライ!若きアマチュア写真家は人を撮りたいのに躊躇している。当然の理由がある。だが、そこんところを何とかしないと人は撮れない。村上槙吾はなりふり構わず正面突破をした。電車の中で一眼レフカメラで人目をはばからずに車内を撮ったのだ。恐れいいった。重ねてエライ! エライのはそこまでで、写真から感動が伝わらない。突き動かされる何かが薄い。これはどうしたことか?押すシャッターの人差し指に力がない。ただ撮った感じだ。村上槙吾は透明人間になって、感情を置き忘れたようだ。人の多さ、その全体重の重さに反して軽くすきま風が流れている。もっと撮る目を突き立てよう! ②は、被写体のベテラン夫婦に許可を頂き、お二人の記念撮影のようにしてシャッターをパチリ。風景も二人を包み込み、暖かい写真ができた。永きパートナーとしての良き繋がりを表現したかった、と撮影者は語る。 残念なのは、同じ角度の写真が多すぎたことだ。後ろからの腕組みスタイル、4本の広げられた手、膝下の4本の足、並んだ二つのヒップ・・・等々、正面写真を基本にしながら、二人をもっと浮かび上がらせる撮り方、作品の見せ方があったのでは。笑顔という表情だけでは見えない何か、写真だから見える繋がりもあったのでは。 ・ 人工物という風景。 ①は「殻」という視点で現代文明、現代社会、現代生活にチャレンジしている。 そうはいっても集合住宅しか撮ってはいない。「集合住宅」というタイトルのほうがストレートだが、それでは文明批判のトーンが低いとみたのだろう。それに、殻・カラという言葉の美学、イメージを大事にしたかったのだろう。 要するに「殻としての集合住宅・写真集」だ。この写真集も視点が余りに統一的で、面白味に欠ける。面白い視点なのだが、この写真で終わったら面白くない。テーマに取り組む為の素材集めの段階だ。さー、この写真を毎日見ながら、写真表現としてどうするか?足りない物、更に感じたことをもっともっと写真にして欲しかった。 ②は、単純に「炭鉱遺産」がテーマ。そして単純に風景の点景として炭鉱遺物を挿入した。全部そればかりだ。青空の下、炭鉱の遺物も自然に同化されそうだ。「ここにあるぞー」と撮影者は言っているみたい。 過去完了形の日本炭鉱遺物にいろんな写真家がチャレンジしている。思い出だけに終わらしたくないと、ヒューマンを基底にして炭鉱遺物を見つめている。 前川要の立つ位置は何だろう?決して中に入ろうとはしない。あまたある「炭鉱遺跡・写真」の中で独自の位置を築く為の意図的方法か?若いのに、そんな方法は姑息というものだ。 風景と炭鉱遺物の調和がテーマか?今回はたまたま「炭鉱」で、「民家」でも、「温泉郷」でも、「橋」でもいいのかもしれない。 それとも、単なる記録としての炭鉱跡地? テーマがテーマだから、もっと熱のある作品を、臭くとも踏み込んだ作品を見たかった。単に「風景」というタイトルの方が良かった。
by sakaidoori
| 2011-02-14 17:25
| 資料館
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アバウト
丸島 均。札幌を中心に美術ギャラリーの感想記、&雑記・紹介。写真は「平間理彩(藤女子大学写真部OG) 『熱帯夜』組作品の一点」。巡回展「それぞれの海.~」出品作品。2018.8.30記。2577)に説明有り。 by sakaidoori カレンダー
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