2011年 02月 14日
○ 専門学校 札幌ビジュアルアーツ・写真学科2年 卒業制作作品展 会場:札幌市資料館 2階1室 中央区大通西13丁目 (旧札幌控訴院。 大通公園の西の果て) 電話(011)251-0731 会期:2011年2月8日(火)~2月13日(日) 休み:月曜日 時間:9:00~19:00 ※ 同時開催 ⇒ 「卒業制作展」 於・札幌富士フィルムサロン 2月18日(金)~2月23日(水) ーーーーーーーーーーーーー(2.11) 24名の展覧会。昨年に続いて多人数の卒業生とのことだ。僕は一昨年に初めて当学校の卒展を見たのだが、半分くらいだった。 会場は雪祭りと重なり、それなりの訪問者が寄せては退くの繰り返しで盛況であった。 作品も充実している。大学美術部の心象スナップ一般とは違った歯切れの良さがある。一般アマチュアの単なるネイチャー讃歌もなくて宜しい。カラーに白黒とランダムに並び、テーマもヌード、風景、人の群れ、カップル、都会に田舎、やらせもあり飽きることはない。二人の外人もいて感覚の違いを見せている。しかも、安定した仕上げ具合だから、此方の満足度も高い。見て損のない展覧会だ。 気になる点も書いておこう。 安定した被写体が多いと言うことは、ギラギラと被写体に迫る迫力の薄さでもある。それは、日頃仲間内で互いの写真を批判しあってないからだろう。ゴー・イング・マイ・ウェイは良いのだが、被写体の単なる造型の面白さや、被写体におもねりすぎた作品もある。被写体に密着する、離れる、無我夢中でシャッターを押しまくる、徹底的なバーチャル、そんな撮り手の若さが少し足りない気がした。 何故だか二人一組で載せていきます。 ・ 不思議な感覚の二人。 共に不思議な作品だ。個人的には絶賛だ。言い訳ですが、その魅力を語るのに未だ実力不足を痛感する。 ①はベトナム青年の作品。普通に銭函のさびた民家と風景。 夢世界に入った雰囲気だ。古びた民家が、僕にはおとぎの国のチョコレートの家に見えて困った。間違いなく風景を、家を撮っているだけなのだが、一つ一つの物がま~るく次から次へと視線をバトンタッチさせ、中央付近にゆられながら誘っていく。そして、そこは閉じこめられてしまった優しい空間なのだ。決して被写体の哀愁さが原因ではない。古びた民家はただ古いだけだ。しかもしっかりと風景を見定めている。撮影者の不思議なおまじないで思考がぐらりと揺れてしまった。そしてチョコレートに包まれてしまった ②は、一見散漫な写真群だ。散漫なのに一本の線がある。撮影者はそれを「YUMEUTUTU、ゆめうつつ」と名付けている。 彼女の言葉を載せよう。 「わたしはいつもぼうっとしている。 空を見上げる時、ベンチに座っている時、とことんひとり歩いているとき、 そんな時にやってくる。 ぱっと閃いたような景色。 一瞬だけ、うそみたいだけど、ほんとう」 写真は決して心象スナップではない。色は強い。撮影者は普段はボーっとしているのだろうが、シャッターを押す時の五感は強い。強く「風景」に向かっている。何かの閃きが見えるという。 彼女に、「一貫した視点の写真を撮れ」、というほど間の抜けた言葉はない。徹底的にその閃きを撮り続けて、その先に進んでもらいたい。見えない向こう側ではない。間違いなくそこにある何か、写真にだけに見える、写る何かを。 ・ 次は肩の凝らない二人のヌード。男と女の見た女の体。貴方はどちら好み? 露出度、艶やかさでは①の菊池弘樹だ。流れるような生の気配と意外性では②の岡田瑶だ。ある意味でありふれた感じのする菊池弘樹よりも、若さ溢れる感覚でヌードに迫る岡田瑶を選びたい。 ところで、岡田作品はセルフポートレートだ。僕はヌードが好きだから、あえてヌードとして菊池作品と戦わせた。果たして、岡田瑶にはヌード作品いう意識がどこまであったか?自分とは何か?自分をさらけ出したい、美しく見せたい・・・その結果が、恍惚状態のこの作品だ。彼女の意志に関係なく、十代最後の肉体が発するエネルギーは美しい。あるがままの美しさを発する写真の自分、ボケとユラギと動きによる顔のない写真の自分。そういう自分の「発見」がこの作品だろう。出発点の作品だ。 一方、菊池弘樹には目的は明快だ。ヌードの魅力、欲望の魅力、それに耽溺させる為にこの作品はある。興奮させるヌードを作れたかが大きな課題だ。次に、見させて興奮させて、しかもその上に写真は何を語れるか?特に、写真の遊びと黒、写真の嘘と誠の確認作業だ。 そういう意味で、「写真をしている」菊池弘樹の目標設定と行為に僕は軍配を上げたい。男の撮る女の方が、やはり本当のヌードに見えるから。 ・ 作る人、作られた作品。 ①はコンビニのレジでのお客さんのお顔。いかにもヤラセで、そのヤラセが分かるような誇張振りと派手な白さでユーモアを高めている。背景の商品まで嘘に見えたりして、そういう嘘実相反する世界は大好きだ。同じバージョンばかりで、バーチャル不足、ユーモアの財布の出し惜しみに思えた。 ②も同じくユーモア作品。コンパクトで枠にはまった綺麗な仕上げ具合が何かのパッケージとか、広告デザインを思い浮かべる。普段の消費生活を揶揄したいのだろう。 コンパクトなユーモア精神だが、タイトルは大ボラ精神だ。ちょっとギャップがありすぎてタイトル負けしたみたい。 (続く。続けて②を書きます。)
by sakaidoori
| 2011-02-14 14:58
| 資料館
|
アバウト
丸島 均。札幌を中心に美術ギャラリーの感想記、&雑記・紹介。写真は「平間理彩(藤女子大学写真部OG) 『熱帯夜』組作品の一点」。巡回展「それぞれの海.~」出品作品。2018.8.30記。2577)に説明有り。 by sakaidoori カレンダー
検索
最新の記事
ファン
カテゴリ
全体 ★ 挨拶・リンク ★ 栄通の案内板 ★アバウトの写真について ★ 目次 (たぴお) (時計台) 市民ギャラリー (写真ライブラリー) さいとう 大丸藤井スカイホール (ユリイカ) ミヤシタ テンポラリー af 北専・アイボリー CAI(円山) CAI02(昭和ビル) (大同) アートマン アートスペース201 大通美術館 STVエントランスホール コンチネンタル 資料館 門馬・ANNEX 百貨店 (カコイ・ミクロ) 4プラ・華アグラ 石の蔵・はやし (シカク) ☆道外公共美術館ギャラリー (アッタ) 奥井理g. ★ 案内&情報 ★ 訪問客数 ◎ 樹 ◎ 花 ◎ 山 ◎ 本 ◎ 旅・飛行機・船 ◎ 温泉 ◎ 個人記 ◎ 風景 ◎ 短歌・詩・文芸 ☆★ ギャラリー巡り 写真)光映堂ウエスト・フォー (いろへや Dr.ツクール) JRタワーARTBOX ポルト 写真)富士フォト・サロン 道新プラザ 紀伊國屋書店 S-AIR ◎ 自宅 (ニュー・スター) 札信ギャラリー (マカシブ) (自由空間) 真駒内滝野霊園 サード・イアー (どらーる) 区民センター ★★ 管理人用 山の手 富樫アトリエ (プラハ2+ディープ) ★ギャラリー情報 ★ パンフより 創(そう) (オリジナル) ATTIC 美容院「EX]内 ADP 粋ふよう エッセ ◎ 雑記 ★「案内版」アバウトの写真 ☆北海道埋蔵文化センター ☆三岸好太郎美術館 ☆本郷新彫刻美術館 ☆芸術の森美術館 ☆函館美術館 ☆札幌・近代美術館 ☆モエレ沼公園 ☆旭川美術館 ☆北海道開拓記念館 ☆帯広美術館 ☆関口雄揮記念美術館 (☆夕張美術館) ☆(倶知安)小川原美術館 ☆(岩見沢)松島正幸記念館 ☆(室蘭)室蘭市民美術館 ☆北武記念絵画館 ★その他 【道外・関西】 ー [石狩] [ニセコ]有島記念館 [岩見沢]キューマル 他 [音威子府] [深川] [苫小牧]博物館 [洞爺] ☆小樽美術館 市民ギャラリー [美唄] [江別] [室蘭] [小樽] [帯広] [恵庭] 夢創館 【北広島・由仁】 [函館] [夕張] [三笠] [赤平・芦別] 【幌加内(政和)】 (くらふと)品品法邑 (茶廊)法邑 (カフェ)れんが (ブックカフェ)開化 (カフェ)アンジュ (カフェ)北都館 (カフェ)エスキス (画廊喫茶)チャオ (カフェ・soso) (カフェ)ト・オン (カフェ)アトリエムラ (カフェ)サーハビー 槌本紘子ストックホルムキ記 (画廊喫茶)仔馬 (ギャラリー&コーヒー)犬養 Plantation CAFE BLANC(ブラン) - コレクション ■ 複数会場 公共空間 ー ◎ 風景 新さっぽろg. ー ○ 栄通日記 学校構内 ー ◎ライブ路上パフォーマンス 道銀・らいらっく (コジカ) ▲個人特集 (風景)サイクリング・ロード (風景)札幌・都心 A.S.T(定山渓) 趣味の郷 公共空間・地下コンコース 六花亭 ◎今日・昨日・最近の風景 500m美術館 Room11 アルテポルト・ART SPACE サテライト 【2010年旅行記】 【2010年 ロシア旅行】 【海外旅行】 【2012年上海旅行】 【震災跡地2回目の旅】 【2013旅行記】 ◎ 川・橋 OYOYO コケティッシュ ・我が家 レタラ カモカモ 北のモンパルナス チチ クロスホテル札幌 黒い森美術館 Caballer ▲原田ミドーモザイク画 SYMBIOSIS (ハルカヤマ藝術要塞) 群青(2016) チカホ space1-105 100枚のスナップを見る会 北海道市民活動センター 群青(2018) HUG(教育大文化施設) 札幌グランピスタ 大洋(大洋ビル) - 未分類 タグ
個展(242)
グループ展(183) 油彩画(183) 企画展(153) インスタレーション(115) その他(98) 学生展(93) 現代美術(74) 写真(71) 公募展(70) 写真展(59) 総合・複合展(43) 温泉・山・旅行・雑記(42) 彫刻・金属・ガラス・陶(40) 日本画(38) 北海道教育大学(37) 版画・イラスト(31) シルクスクリーン(26) 藤谷康晴(25) 卒業展(24) リンク
○ 美術関係以外
古い日記 (サカイ・ヒロシさんのブログ) ○ 美術愛好家のブログ Ryoさんのイートアート (サカモト・キミオさんのH.P.) 散歩日記V3 (SHさんのブログ) ○ 表現者のブロブ(相互リンク?) Photo Foto Blue (コバヤシ・ユカさんのブログ) 水彩の旅 (タケツ・ノボルさんのH.P.) アートダイアリー (マエカワ・ヨシエさんのブログ) 画像一覧
最新のトラックバック
以前の記事
2018年 11月 2018年 10月 2018年 09月 2018年 08月 2017年 08月 2017年 02月 2017年 01月 2016年 05月 2016年 04月 2016年 02月 more... ブログパーツ
その他のジャンル
記事ランキング
ブログジャンル
|
ファン申請 |
||