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栄通記

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2011年 01月 23日

1438)②「白鳥信之・展」・エッセ  1月11日(火)~1月23日(日)

○ 白鳥信之・展 

 会場:ギャラリー・エッセ
     北区北9条西3丁目9-1 
       ル・ノール北9条ビル1階
     (南北に走る片側2車線道路の東側。)
     電話(011)708-0606

 会期:2011年1月11日(火)~1月23日(日)
 休み:月曜日
 時間:10:00~19:00
     (最終日は、~17:00まで)

ーーーーーーーーーーーーーーーーー(1.11)

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          ↑:「忘れ難き人  野村利春さん。長崎県北松浦郡福島町出身」。


 (以下、敬称は省略させて頂きます。)

 私はこの作品が一番好きだった。具象展なるが故に魅せられた作品と言っていいだろう。

 この作品は今展では趣を異にしている。
 農作業夫や年配者の人物を見せる中で、比較的若い現場作業夫だ。
 何より異質なのは、他の全作品がなにがしかの誇らしさに包まれているのに、唯一木訥で、むしろいじけ気味の人物であることだ。

 白鳥信之は存在の本質を追究する画家だ。いや、「本質」は画家にあっては瞬時に了解し、その存在の厳かさや尊厳を追い求めている画家と言った方がいい。
 「尊厳」は静かな祭壇になり、見果てぬ夢(ロマン)への讃歌にもなる。
 男が夢を描く時には女が一番手っ取り早い。そして甘さが強くなった時の白鳥・女性画はロマン過多になり、追求する所の絵画美の本質が薄くなる。男が女を描く時の魅力と危険性を、素直に絵にする時がある。

 人間くさい存在を描く時には年配者が良い。その皺ほど、「人間」を感じる時はない。リアリズムの興るゆえんである。しかし、氏は細密に描いてはいるが、線描みなぎる細密描写を好まない。氏の持つ体質的な詩情がそれを欲しないのだろう。代わりに日本美の一つである伶俐な空気描写、間という存在描写で対象に迫る。

 だが、どうしても人を描けばロマンやヒューマニズムで覆われがちになる。愛や倫理観がダイレクトに見る側に伝わる。それは画家自身の発する信念や強さが絵を成り立たせているからだろう。だから意外にも、絵と見る者の関係は絵からの一方通行なのだ。
 僕が好きと言った若き労務者作品は余りに普通の姿だ。モデルは凡庸な優しき人のようだ。「弱き人」を画家は描いている。確かにそれも白鳥・ロマンの裏返しかもしれない。だが、裏返しの一方通行はここにはない。画家はかなりの自己制御をして、人物を「普通の人」にすることに徹している。愛を抑え、静かに見せている。
 モデルは在日朝鮮人のように見える。日本社会で底辺に生きた人かもしれない。ただ働くことだけの生涯ではなかったのか。愚痴ることもなく、そして人知れず他界されたことだろう。賢治のデクノボウを見る思いだ。
 社会的リアリズムを廃し、ロマン主義を拒否し、居合い抜き的な勝負絵とは無縁だ。白鳥・詩情で存在のリアリズムを追求している。


              ~~~~~~~~~~~~~


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 今展は2部構成になっている。

 風景(空間)に収まる人物絵画群。大作、力作ばかりだ。背景の描き方で画境の流れがみれる。写実重点、空間処理としての自然景、抽象(イメージ)描写、と背景処理はいろいろある。
 林檎の静物画を狂言回しのようにして、小さな肖像画群。自然体を良しとする表情と風采だ。遺影と見る人も多いことだろう。

 こういう展示方法は、普通は大作重視だ。小品のポートレートは大事な余韻として機能する。
 だが、今展の小品群は重い。広い窓際に配置されてもっとも目立つ。光も燦々と受けて輝いている。要するに、意図的に一等席を小品群で埋めている。大作、小作のバランスが普通とは逆転している。おかげで大作の魅力に目が行き届かない。つまり、ベターな展示だがベストではない。
 今秋、東京で二部屋を借りた個展をされるとのことだ。その準備をも兼ねた個展なのだろう。大作、小作の響き合いを確認しているのだ。だから積極的にDMを市内に配布しなかったのだろう。

 他に余韻として女性画がある。直立した女性画は1986年とサインがある。画家になり始めの頃の絵という。その凄みと力強さは今でも傑作と言っていいだろう。

 絵から赤裸々な力強さや凄みを消去すること、そういう変遷の帰結が「忘れがたき人」と理解した。


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  1945年 喜茂別町生まれ
  1986年 札幌大同ギャラリーで個展
       
 この個展が実質的な初個展だろう。というか、かなり後れて油彩画を独学された方だ。ここから画業が始まる。

by sakaidoori | 2011-01-23 20:20 | エッセ


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