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栄通記

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2011年 01月 13日

1427)「現在を見つめる眼~Vol.2 全国にはばたく北海道の高校生」道銀らいらっく 1月4日(火)~1月15日(土)

○ 現在を見つめる眼 ~Vol.2  

   全国にはばたく北海道の高校生たち
   


 会場:らいらっく・ぎゃらりい
     中央区大通西4丁目
      北海道銀行本店ビル 1F
      (大通公園の南側、北東角地。)
     電話(011)233-1029

 会期:2011年1月4日(火)~1月15日(土)
 休み:日曜日(定休日)
 時間:10:00~17:00
     (初日は、12:00~から。最終日は、~16:00まで)

 企画:(財)道銀文化財団

 【選抜高校生】
 石井元武 角田彩菜 大門夕莉 野田玲菜 福森珠美 村上可南子 大滝文野 若狭ひかる 中村こより 小松詩緒里・・・以上、10名。

 (詳細はDMを拡大して確認して下さい。)

ーーーーーーーーーーーーーーー(1.11)

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会場はとても狭い。作品との距離を自由に保てない。仕方がないが、もったいない。
 それでも入り口の4点はいくらかでも離れて見れるので、どうしてもそれらの絵を中心に見てしまう。

 以下の10点の作品は、昨年の北海道地区高文連で選ばれた作品だと思います。この作品達は今年の8月、福島県の高文連全国大会に出品されます。関係者はどういう作品を好んでいるか、良き判断材料になるでしょう。

 ということで、上に載せた4点の作品から記します。


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          ↑:札幌国際情報高校2年・大門夕莉、「Show Window」・油彩 F30号。

 画面の大半はショー・ウインドウのガラス越しの景色だ。
 絵としてはガラス越しの質感、遠近感の表現が大事なのだろう。そして、「ガラスの国のアリス」ではないが、直に触れれない向こうの世界の存在感が描き手の思想になる。

 「暗い絵ばかり描いていたので、キラキラ光る空間を描きたかった」と大門君は自作を語る。
 画題は夢あり明るいが、どこか、他人とは一線を画した距離感、冷ややかさを保っている。
 実景を見て、写真を撮って、その写真を見ながら描いたのだろう。そして、絵として工夫したのだろう。
 あまりにも一所懸命に写真を見過ぎた。窓越しの「風景」を「虚構」にしてしまった。上手い描き手だから、素直にもう一つの大門・心を出してしまった。華やかさや夢見心地の世界は何処かへ行って、動きのない「対象の世界」になってしまった。風景を「静物画」にしてしまう性癖があるようだ。自分自身が踏み越えきれない向こうの世界、そんな静物画だ。今は人物画を画かない人だと思う。


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          ↑:函館西高校2年・野田怜菜、放課後」・「油彩 F30号。

 こういう絵が高校生展にないと面白くない。

 先に書いた大門君とは正反対だ。
 学生の学校という集団生活の所在なさを表現している。整然と並んだ机と椅子、今そこには学友はいない。光が物憂げに教室を照らす。光は影となって、明るい静寂を表現している。
 だが何と言っても、静かな中にいる少女には力がある。何故自分が此処にいるのかは分からないが、間違いなく私は此処に居る、そんな学生だ。それは野田怜菜君が表現したかった事だろう。「人間を描く」という強い意志だ。


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          ↑:札幌東高校2年・石井元武、「野幌河川敷」・油彩 F30号。

 これは上手すぎて何かを語るには失礼な感じだ。余りにもソツなく収めすぎたので、面白味に欠けるかもしれない。
 屋根の水平線ラインが中央よりもやや下目。その横ラインを縦に横断する塔も小振りにして目立たせ中央から外す。基本は横拡がりの構図だが、道路を画面斜めに切り手前の草を大きく描いて遠近感を出し、雲と空が全体の重しになる。この安定した構図が画力を支えているようだ。規範の構図から、石井元武・流の構図が課題なのだろう。


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          ↑:北海道おといねっぷ高校2年・若狭ひかる、「帰省虫」・油彩 F30号。

 手首を平面的に切ったラインが眼を惹く。
 地球という惑星に宇宙飛行士や手首だけの異星人がやって来て、地球教室内のゴミをあさって遊んでいるみたい。シュールというか絵空事の世界なのだが、遊び心なり極端さが薄い。30号という大きさにいろんな事を対等に詰め込もうとして、その意欲が空回りした感じだ。おといねっぷ高校の力量と明るい誇張美が生かされていないと思った。


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          ↑:札幌啓成高校2年・角田彩奈、「光るモノ・油彩 F30号。

 展示の向きが違うのではと思った。縦向きではなく横向きではと思った。だから、ついついこちら側が体をくねらせて見がちになる。確かにスカートのリボンや髪の毛、それい着ている服も下に垂れている。
 「この面を上に」という文字まで横にして、トリッキーな絵だった。


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          ↑:滝川西高校1年・村上可南子、「ひなたぼっこ」・油彩 F30号。

 「ひなたぼっこ」というよりも、一心に光を受けて胸を張っている絵だ。絵を描く事が楽しくて仕方がないというムードだ。見るもの聞くもの、何でも絵にしたいのだろう。


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          ↑:旭川南高校1年・大滝文野、「zoo・アクリル F30号。


 子供を囲む動物や植物がもう少し大きかったらと思う。遠くの気球はもっともっと大きい方が楽しそう。楽しさを遠慮して、海や空の「青」を本当は表現したかったのかな?


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          ↑:室蘭東翔高校2年・小松詩緒里、「宝箱」・ペン画 F30号。

 全体が描かない白と描いた黒との濃淡、光の明暗を意識した作品になっている。細かく見ると言うより、作品全体の強さに目が向いてしまう。
 光と向かい合う植物、派手な動きはないが、光に守られて成長する一瞬の生命力を思う。だからペンの筆致も外に向かってギュッと発散する力を感じる。細かく描いているのに、その細かさに気が付きにくい。細かさに支えられた強い作品だ。



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          ↑:帯広柏葉高校2年・中村こより、「帰り道」・油彩 F30号。

 独特なタッチの絵だ。画材が中でうねって、うねりながら外に発散しているような輝きだ。ネチッコとした筆さばきは、絵の具と遊ぶのが堪らなく好きなのだろうこのタッチに赤系の色は良く似合う。



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          ↑:岩内高校2年、福森珠美、「主なき椅子」・油彩 F30号。

 好きな高校の一つに岩内高校がある。好きな者、描きたい物を臆せず真ん中に大きく描く、そんあ傾向をこの学校にみる。
 この作品もまさしくそうだ。捨てられたパイプ椅子をビシッと真ん中に描いている。他もしっかり描いているが、主人公を脅かす存在ではない。全てはこの椅子の僕のように奉仕している。
 廃棄物だが綺麗な倚子だ。その限りでは美しすぎてリアルさに欠ける。リアルな絵ではない。大事に大事に描きたいという学生の強い思いが美しい倚子にしている。
 絵に対する悩み無き一途な態度、これは高校生だけのものか?若さがなす真摯な態度、若くない画家は絵を作らなければいけない。絵を作る、難しき世界だ。

by sakaidoori | 2011-01-13 16:31 | 道銀・らいらっく


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