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栄通記

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2010年 12月 17日

1365) エッセ 「佐藤仁敬・展」 12月14日(火)~12月19日(日)

○ 佐藤仁敬・展


 会場:ギャラリー・エッセ
     北区北9条西3丁目9-1 
       ル・ノール北9条ビル1階
     (南北に走る片側2車線道路の東側。)
     電話(011)708-0606

 会期:2010年12月14日(火)~12月19日(日)
 時間:10:00~19:00
     (最終日は、~16:00まで)

ーーーーーーーーーーーーーーーーー(12.14)

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 外からの窓越しの室内風景。
 (以下、敬称は省略させて頂きます。)


 当館の魅力は外光が部屋に充満していることだ。西日による作品の輝きは抜群だ。日没後の会場の明るさはあまりにお洒落すぎて、外からついついのぞき込んでしまう。特に今展の佐藤仁敬のように大きく黒い作品は、壁の白さ床の黄色味や天井の模様と黒さに反応して一際目立つ。

 佐藤仁敬は有名な全国公募団体・独立展に所属していて、現在会友である。
 その会の特徴を栄通風に言えば、「人間探求型重厚絵画」だ。僕自身は重く暗い絵は好きだ。

 佐藤ワールドも独立展型重厚心理絵画といっていいのだろう。タイトルも重たい内向性を秘めたものだ。
 曰く「パラノイド」。偏執病、他人の敵意を想像して、よろしくない妄想を抱き、いつしか他人に対して攻撃的に振る舞う精神障害、こんな意味だろう。「他人の敵意を勝手に抱く」・「妄想」・「他者への攻撃」、この三拍子がキーワードだ。
 佐藤ワールドの視点は個人の「妄想」を絵画化することだ。その絵画には「他人の敵意」や「他者への攻撃」の要素は薄い。タイトルを読んで、「この妄想絵画を『パラノイド』として見よ、と言っている。この絵画には目に見えない他者が充満していて、彼等が少女を攻撃し、少女も己を守る為に他者を攻撃する心構えなのだ・・・と、タイトルは言っている。

 タイトルや絵画の粘着性も面白い。何よりブラック・ワールドなところが目を惹くのだが、少し説明的なのが僕には不満だ。絵の中の女性なり絵画全体が凄みでパラノイドで迫ってくるとか、感情移入なり共感によって胸が痛いとかにはならない。今年の新作群の少女や船の舵には、いつになく何かをめざす力強さを感じる。だが、それらの浮遊感と存在感、具象性とがマッチしているのだろうか?小道具に象徴的意味を持たせているみたいだが、日本文化なり日々の世界とは無縁な感じでどこか取り留めがない。

 僕は作家の作為的意図よりも、絵全体の持つ強さーーそれは佐藤仁敬その人の強さなのだがーーと浮遊感とのアンバランス、作家自身の遊び心と絵の中で遊び心を充分に発揮していないギャップを楽しんでいる。佐藤仁敬は本当は動じない何かの持ち主であり、その何かを信じていると絵が語っているようだ。ただ、それが何なのかを自覚できなくて信じ切れなくて、自身の非都会的センスを「パラノイド」という近代的言語思想の壁で覆って、あらぬものを実体化しているようだ。
 作家自身のパワーを絵空事の絵画でいかに存在感を与えるか、同時に絵空事としての絵画でリアルに遊べるか、そんなことを求めている画家だと思う。それは僕の勝手な誤解かもしれない。誤解であってもいい、勘違いが修正されるまで、若き画家の精神と時代精神との関わりを画業の中で確認していきたいと思っている。


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     ↑:以下、大作は全て「paranoid」・今年(2010年)の新作群 パネル 油彩。


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 いつになく媚びた姿態がいい。全然エロチックではないのだが、エロス表現に悩める画家を楽しめた。


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     ↑:昨年(2009年)の作品群。


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 好きな作品。意味不明の如くに真ん中にシンプルな黒を配置したのが良い。この黒を中心に放射状に絵を見ていった。


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     ↑:「kotoni 1-4」・2010年 パネル 紙 鉛筆 コンテ パステル。

 静かな琴似、死んだような琴似・・・端正な作家の心根も聞こえてきそう。


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          ↑:「○△□」・2010年 パネル 油彩。

by sakaidoori | 2010-12-17 15:32 | エッセ


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