栄通記

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2010年 09月 13日

1368) 門馬 「Derivation (3人展 アサノ・イナトミ・ホウジョウ)」 終了・9月1日(土)~9月10日(金)


○ Derivation 

    Asano Takayuki(浅野孝之
    Inatomi junsuke(稲富淳輔
    Hojo hiroto(北條裕人



 会場:ギャラリー・門馬&ANNEX 
     中央区旭ヶ丘2丁目3-38
     (バス停旭ヶ丘高校前近く) 
     電話(011)562ー1055

 会期:2010年9月1日(土)~9月10日(金)
     (会期中無休)
 時間:10:00~18:00
     (最終日は、~17:00まで)

※ オープニング・パーティー ⇒ 初日 18:00~20:00

※ 同時開催 ⇒ 神内康年・展 「On the floor」 
             日程&会場は当展と同じ。

ーーーーーーーーーーーーーー(9.10)

 (以下、敬称は省略させて頂きます。)

 京都造形大学大学院を修了あるいは卒業された若い3人の展覧会。

 それぞれの感性は違うし、使う素材や技法も全く違うのだが、何かしらの統一感を感じる展覧会だ。その統一感が道内の若い人達の指向性との違いを際だたせている。彼等は、「美しくさわやかに」まとめる。作家と対象との関係性も道内勢とは微妙に異なるみたいだ。この場合の「対象」とは画題、素材、作家を包み込む場や空気感などの諸々なのだが、今展の若者達は、作家という生理をそぎ落とす方向にあるようだ。自分自身の感性を対象にのめり込ませる、と言った方がいい。少なくとも、「我ありき」という強き自己肯定にこだわってはいない。対象を見つめる強さの違いなのだろう。「対象ありき」とでも言おうか?その若さでで、と言いたいが豊かな時代の時代思潮を体現していると思っている。
 ・・・、話が僕の頭の中でグルグル回り始めてしまった。この続きなり要点は次回の道外作家の折りにでも進めていこう。

 前回紹介した神内康年・アネックス乳白色回廊と同様に、全体の流れなり空気感を大事にした展覧会だ。まずは全体の流れから載せるべきなのだが、重複の恐れもあるので入り口から見ていきます。僕自身はソファーのある部屋の稲富淳輔(Inatomi Junsuke)作品、特に絵画に惹かれた。


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     ↑:玄関ホールの風景。上掲の2枚は逆向き。


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     ↑:以上、玄関の一部の作品を除いて浅野孝之(Asano Takayuki)

 
 安近短の代名詞のような既製品を使って、何かと楽しんでいる作家だ。
 既製品は何かの構築物の一部とか、部品として使ってはいない。どうでもいい物を、どうでもよくあしらって、作家自身がこだわっている何かを引き出させる手段として働いているようだ。手段ではあるが「それ自体」がとても重要で、既製品に対して、「一体お前は何ものなのだ?おれは物にはなりきれない。ここは一つ物に徹して、オレの感性の代役をしてくえないか?」、そんな風に展示は進められている。
 冷ややかに思えるプラスチック、その肌触りや見た目の無色透明感はまさに現代文明そのものだ。それらは作家にとっては余りにも日常そのもので、そこに感性の切り口の「気付き」をまさぐっているようだ。


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 廊下を後にして、自宅内?に。


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 壁に飾られた大きなひび割れ作品・2点が北條裕人(Hojo Hiroto)。
 彼の作品というか陣地は2階だ。真っ直ぐ階段を上がることにします。


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 土とひび割れ、そして日本的な箔が主題のようだ。「土とひび割れ」と言えば泥臭いのに決まっているのだが、実際極端なまでにひび割れを強調しているのだが、全然生理が伝わらない。おそらく「箔仕上げ」風に試みている精神にあるのだろう。日本美の中に作家の青年性を碑として埋め込む。

 この「埋め込む」を現代の利器を酷使して制作されたのが2階にあった。エネルギーを封印して開花させた作品と言って良いだろう。


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 窓を背にして壁が立っている。壁にも窓がある。その窓が作者渾身のミクロ・ワールドだ。中には丸い物が何層にも重なり合っている。だから何なのだと言われたら困るのだが、実際そう言いたくなるのだが、同時に詰め込まれたエネルギーの静けさには圧倒される。空間に生理を無化する方向にあるようだ。作家にとって「窓」がキーのようだ。「ひび割れ」という窓、「入れ子状態」としての窓、次の窓に巡りあえるのだろうか?


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 ようやくお気に入りの稲富淳輔(Inatomi Junsukeの部屋にやって来た。
 なのに、ここまでで語りすぎたようだ。


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 上の5個の壺?が今展の中心だ。「人」であり、「群れ」だ。そして「壺」は何かを留める場だ。彼は焼き物としての「器」を作る。おそらく全ての器は「壺」に繋がっていると思う。「包み込む」ということと、「包まれた場」が大事なのだ。どこか老荘思想の「虚無の宝庫」が連想されるが、より強く人間の感性の輝く「無」という存在感なのだろう。けっして消え入ることなくそこにある。そこにあるのだが・・・、ここから先が作家のテーマだろう。
 ジャコメッティーが追求したテーマでもある。稲垣淳輔は美に流されることなく、しかも日本的な美・感性の中で「現代」と対峙する力があるかどうか?


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 絵画作品には薄くきつく直線が施されている。焼き物のひび割れの絵画化だと思っている。それに意味を持たせると言うよりも、そうせざるを得ない衝動結果と見た。だが作品としてこれだけ強く残るわけだ。作家はそのことにあれこれと思案を巡らせているだろう。
 消え入りそうで間違いなく表現されている「存在」と「無という場」、清々しい若さだ。

by sakaidoori | 2010-09-13 11:03 | 門馬・ANNEX


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