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栄通記

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2010年 08月 31日

1359) CAI02 「高橋喜代史・個展 ハイブリッドアートⅢ そして伝説へ」 8月20日(金)~9月4日(土)


○ 高橋喜代史・個展

   ハイブリッドアートⅢ そして伝説へ・・・



 会場:CAI02・raum1・2・3
    中央区大通西5丁目 昭和ビル・B2 
    (地下鉄大通駅1番出口。
    注意⇒駅の階段を下りてはいけません。
        昭和ビルの地下2階です。)
    電話(011)802-6438

 会期:2010年8月20日(金)~9月4日(土)
 休み:日曜日・祝日(定休日)
 時間:13:00~23:00

※ オープニング・パーティー ⇒ 初日 19:30~
※ ライブ・パフォーマンス ⇒ 初日 21:00~(約10分)

※ アート・トーク・バトル ⇒ 8月23日(月) 19:30~
                   鎌田亨 vs 高橋喜代史
 主催:当館

ーーーーーーーーーーーーーーー(8.27)

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 (以下、敬称は省略させて頂きます。)


 メインの外壁むき出し暗がりの部屋に、高橋喜代史・新作が厳かに鎮座している。黒光りが眩しい。何かは知らないが、高橋喜代史流「超ド級戦艦」だ。作品名は「ギューン」だ。

 何はともあれ動かしてもらった、女性スタッフでは手に負えぬとみえて、オーナー端聡氏の登場だ。
 「ガチャガチャ、ガチャガチャ・・」と力んでハンドルを回し、バネを引っ張る。豪放な黒光り姿に反して、やや壊れそうなバネのきしみ音だ。そこをグッと踏ん張って引っ張る!用意完了、発射!!取り付けられた黒鉄板は放たれ、豪快な「ゴロゴロ音」を弾きづり、天空目指して一目さん!!!と思いきや、弓なりのレール先端を目指した「鉄板弾」は、すこしばかりよじ登っては、寂しき「ゴロゴロ音」を友にして戻ってきた。

 端さん曰く、「かなり使ったので、バネが弱くなったみたいですね。ぎゅ~ぅ~ぅ~んと行くんですよ、ギュ~ゥ~ゥ~ンと」。語尾を上げての説明だが、鉄板は語尾が下がっていた。
 実に楽しげに語る。細身の体からポーズを交え、更に目を細めて、CAI若仙人の風貌である。どうでも良い作品を、どうでも良く楽んでいる、実に良い人である。つかの間の微笑ましい一時でもあった。


 さて、今作「ギューン」は高橋喜代史の体質が良く出ている。いつもの張りぼて細工とは違い、「鉄」という実体を使いこなしている。一切の無駄を廃した重厚長大さだ。軽薄短小当世若者気質とは一線を画している。そこが良い。
 小説家・坂口安吾は合理的なものは美しいと言い、帝国海軍戦艦の勇姿を賞賛した。間違いなくその美しさの片鱗が「ギューン」にはある。
 だが、戦艦はその大口径から弾丸を吹っ飛ばして、遠い所からでも敵戦艦を破壊するという目的があった。「目的の明確な物、その無駄を廃した合理的な姿は美しい」、と置き換えなければいけない。見る方は、その目的を暗黙に認知しているから、美しく見えるのだ。暗黙知を前提にした共感美だ。

 それでは高橋喜代史の目的は何だろう?「ギューン」の目的はなんだろう?他者に関係ない個人的なものだろう。
 そして、現代の美術一般、芸術一般を「目的」から語り始めると話がおかしくなる。
 特にインスタレーション作品は「目的」を強く内包している。非言語が肝要な美術に、その目的がストレートに観者に伝わるはずはない。だから分からない。「現代美術はわかりづらい」と言われる。当たり前のことなのだ。そうそう作家の目的が安易に確実に的確に伝わるわけがない。それでは困ると美術関係者は思い、「楽しく感じて下さい」とニッコと娘顔でほほ笑む。詭弁もはなはだしい。本当に「感じる」ことがメインなら、何であんなに難解な解説文が必要なのだろう?「知って欲しい」jから、作品だけでは「説明不十分」と思っているから、あくまでもあの手この手で説明するのだろう。

 今展の高橋「ギューン」鉄板には何も載っていない。夢が載っているのだ。その夢が勢いよく発射されながら、もの悲しい音と一緒に帰還した。それで良いと思う。その喜びや哀れっぽさが今後に華咲けばと思う。

 イマイチ、自分の美術行為に自信がない人だとも思っている。なぜなら、会場には説明キャプションも用意されている。いつになく簡明で正直ではあるが自己説明で、見る人の夢を考慮していない。「オレの気持ちを分かってくれよ!」とつぶやいている。誤解を恐れずに言えば、「高橋喜代史の夢はどうでもいいのだ。高橋喜代史作品の夢を見たいのだ」。
 こぢんまり感が、会場全体を小さくコンパクトにしている。

 正直な「美術展」だった。大きな自信と大きな衒(てら)いに満ちた「喜代史・展」を期待しよう。


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 次室は「ド」の展示と、おそらくオープニング・パーティー時でのパフォーマンスの紹介。


 「ド迫力」の「ド」が好きなんだと作家は言っている。
 今回は「ド迫力」ならぬ「ド可愛い」展示でした。その可愛さやこぢんまり感が、メイン会場に対して、「グリコのオマケ編」的会場にしている。


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 二本の噴射ノズルから墨を発射してできた作品。
 そのパフォーマンス・シーンの映像が流れている。噴射装置もある。

 作家は二刀流の「書」と説明している。僕自身は書ではないと思っている。墨の現代的、あるいはパフォーマンス的表現、絵とは言えると思う。小手先、腕力、体全体を使った書の肉筆性がないから。

by sakaidoori | 2010-08-31 12:01 | CAI02(昭和ビル)


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