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栄通記

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2010年 08月 18日

1341) 時計台 「渡辺和弘・塗装工芸展」 終了・8月9日(月)~8月14日(土)


○ 渡辺和弘・塗装工芸展

 会場:札幌時計台ギャラリー 3階G室
      中央区北1条西3丁目
       札幌時計台文化会館
      (東西の中通りの北側にあるビル)
     電話(011)241ー1831

 会期:2010年8月9日(月)~8月14日(土)
 時間:10:00~18:00 
     (最終日は、~17:00まで)

ーーーーーーーーーーーーー(8.14)

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     ↑:(左側の小品が、やや古い作品群。)


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 さて、「古館章・ブロンズ展」のユーモラス満点の後に、好対照な「渡辺和弘・塗装工芸展」を紹介します。
 (以下、敬称は省略させて頂きます。)


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     ↑:左から、「白韻」 「序」 「克」・全て20110年。



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     ↑:左から、「陽刻」 「月刻」 「月下」・2010年。


 上掲の小品は全て近作。この近作が面白かった。

 若干古い小品が向かい合う形で展示されていた。随分と雰囲気が違う。どこが違うかははっきりしている。旧作は黒色世界の中央付近に模様が施されている。黒の領域が広くてシックな感じだ。視点が中央の模様に向かう一点主義で、基本は黒が支えている。
 対して新作にはワイルド感ががある。動きもある。模様には枠をはみ出す勢いがあり、色も黒の下になっていない。黒を圧倒する作品も多々ある。
 要するに新作は意欲的な試行錯誤であり、旧作は安定した美学の提示だ。


 それでは大作はどうだろう。


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     ↑:左から、「夢月蒼影」 「静韻」・ともに2009年。


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     ↑:「蒼夜月景」・2010年。


 構図中心の抽象表現とも言えるが、どうも違うようだ。自然観なり心象ムードを引きずった工芸的美学、あるいはデザインとひとまず理解した。図柄も大振りで動きもあるが、どこか安定した美学を前提にしている。完形としての円が重要な要素なのがその証だ。

 大作の安定感と小品の試行錯誤性が不一致に見える。
 小品は「オレの可能性は何なんだろう?伝統工芸美は大事だ。その修得の為に多くの時間と努力を費やした。よくは分からないが、更に何かを注がねばならない。構図、色の組み合わせ、大胆な図柄、不定形の枠・・・いろんな事をしよう」。
 大作はチャレンジ精神よりも、表現したい美学が「先にありき」という出で立ちだ。目に見えない伝統に縛られているようで、まだ表現し得ぬ現代美への試みが薄く感じる。近作の小品の躍動感・チャレンジ精神を見た目には、その辺が物足りない。


 作家は自身の作品展を「塗装工芸展」と言っている。分かりやすい自己規定だ。
 
 だが、「工芸」と呼ぶことによって、無用の論争から自身を守っているのかもしれない。なぜなら、「工芸」とは単なる美術ジャンルを意味するのではなく、積極的な価値規定を妊んでいるものだ。伝統性、日常の利便性、職人性、没個性、生活空間を潤す装飾性などなどだ。
 それでは「非工芸」あるいは「反工芸」とは何か?僕は次のように考えている。「自分の美意識を他者に強制する自覚と、その強さ」、あるいは「他人を圧迫する、誇らしげで過剰な自意識(美意識)」と。要するに現代人の過剰性の自覚と作品化だ。

 果たして今後、渡辺和弘は工芸の中だけに、自己の美意識を形作るのに満足するのだろうか?

by sakaidoori | 2010-08-18 22:57 | 時計台


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