2010年 07月 17日
6月18日、この日も前日に続いて暑き快晴。まさに今日の札幌のようだった。 午前中はホテルの近くの郷土博物館と美術館巡り。ギャラリー巡りと市内観光は次回にかくとして、今回は時系列を午後からにします。市郊外のダーチャ訪問です。ダーチャとは仮小屋あるいはバンガロー・別荘付きの家庭菜園です。今回紹介するダーチャには、ハバロフスクの先住少数民族ナナイ族の娘さんとお母さんも登場します。 「ダーチャ」の理解なくしては現代ロシアの社会は見えない、と言い切れます。ところが、僕自身ダーチャのことは「別荘」として理解していたし、その意味を深く考えた事がなかった。知らない事を前提にしたロシア理解を恥はしない、普通の市民の他国理解とはそんなものだ。それで良いと思っている。だが、知ったからには少しでも現場と僕の理解を伝えたいと思う。 息子の知人イリーナさん家族所有のダーチャ。イリーナさんはモンゴル的お顔で二十歳ぐらいの小さくて可愛いお嬢さんです。川魚などの狩猟を生計にしていた、ロシア少数民族のナナイ族女性です。ナナイ族・・・黒沢明監督の「デルス・ウザーラ」のデルス・ウザーラがナナイ族です。 ![]() ![]() 市内から82番路線バスで終着駅へ。この路線のさらに先にハバロフスク空港がある。運賃はどこまで乗っても13ルーブル(約39円)。マイクロバスだから車掌さんというか運賃集金人は同乗していない。支払いはざっくばらんなもので、運転手の右わきに放り投げる状態。上のマイクロバスが乗ってきたバスで、折り返しの時間待ち。 バス停にイリーナさんが迎えに来ていて、歩いてダーチャに向かう。歩くこと10分ぐらい。 ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() 左側が当菜園の主でイリーナさんのお母さん。 右側は一緒になって働いていた人。どういう関係かと伺うと、「心の友」と、粋な返事が返ってきた。 以下、お母さんとの雑談。 「お前は何をしているのか?今回の旅行は休暇か?」 実に直裁な質問で困ったが、嘘のない程度に正直に応えた。 「山に登ったり、本を読んだり、自宅にも小さな空き地があるから花や何かを植えて楽しんだりしている。最近はパソコンに時間を使うのが多くなった」 「そうか、自分の為に生きているのか。年金でももらっているのか?畑は広いのか?」 「年金はもうすぐ妻がもらえる。畑はほんとにわずかなものだ。今年の稔りはどうか?」 「まだわからない。雨が降って欲しい」 なかなかザックバランなお母さんだ。「折角だから何か働いてもらおうか」、などと言っていたが冗談だったようだ。ちょっとその気になったものだ。 ロシア人訪問ということに少しうろたえて心の準備がなかった。日本からのわずかな駄菓子を持っていたが、何もしないのと同様だ。お土産も持って行かなくて申し訳ないことをした。 最後は記念写真で辞した。1時間もいたとは思えない充実感があった。実に気さくな人達だった。 ![]() ![]() イリーナ家はこのダーチャの近くに住んでいる。おそらく集合住宅だと思う。そこから仕事の無い日は毎日通っているのだろう。イリーナさんも小さい時には手伝っていた。若い人一般がそうであるように、今ではダーチャでの実労働には無縁なようだ。 多くのロシア市民は都市の集合住宅に住んでいて、月曜から金曜日まで働いている。そして、週末の土日に郊外の自家ダーチャにいそしむみたいだ。春とは彼等にとって、ダーチャ通いの楽しい始まりを意味しているようだ。ダーチャ、それは畑作りだけではなく、花を育てたり、時には友だちを呼んで多いに雑談に耽ったり、人生の自慢にしているようだ。 集合住宅はソ連時代からの伝統で、工場などの集団労働には効率的だ。だが、あまりに人が密集していて、非人間的なところもあり住宅環境としてはよろしくない。ソ連時代から社会労働の息抜き・リフレッシュの一環として、市民に郊外の空き地を提供したとのことだ。 当時ソ連は私有財産を否定していたから、農地の私有化やそこでの生産物の商品化には公には反対の姿勢だった。だが、作物が自家消費を超えれば、それなりに「商品」として「闇」というか、非公式に販売されていただろう。ソ連崩壊時に、政府公開の穀物生産量では市民の飢餓も必死という報道もあった。だが、体制が危機状態になれば市民はダーチャ農園に普段よりも真剣になるわけで、「飢餓的食糧問題」は無かったと言ってよかったみたいだ。西側のメディアはロシアに近いし独自のニュース・ソースを持っていたので、少数だがダーチャの意義を認識していた。日本人の論客は情報不足ということもあり、より深い認識を流すことができなかった。結果的には誤った認識を流していた。今でも日本人による良質のロシア情報は少ない。ソ連には関心大であっても、ロシアには低いようだ。全ての関心は「北方領土」だけかもしれない。何だかんだと言って、ロシアは隣国だ。仲が良くても悪くても、もっと付き合いたいものだ。 今回、2ヵ所のダーチャを訪問した。日を改めてもう一ヵ所も紹介しますが、今回とは大分較差があるようだ。 イリーナ家のダーチャは作物のみで娯楽の要素はない。ダーチャも自宅に近い。花もひまわりがあったが、愛でると言うよりも、種を楽しみにしているようだ。まさに生きる基盤としてのダーチャだ。隠れ農民だ。それは少数民族ナナイ族の歴史と関係しているのかどうか?ナナイ族のロシア化との問題もあるのかどうか? イリーナさんに民族のことを伺った。「博物館に行けば展示されている」という素っ気ないものだった。その日、たまたま僕は博物館で見ていたのだ。確かにアイヌ他の民族と一緒に紹介されていた。ナナイ族はかなりのスペースだった。日本のように民族問題を忌避するムードはない。が、アイヌ同様に狩猟民族が農民化するのにはいろいろとあったことだろう。 「北海道にもアイヌがいる」と言ったら、「本で知っている」との返事だ。ちなみに今の彼女の大いなる関心はバブテスト教会にあるようだ。信仰の基礎であり、重要な生活基盤のようだ。 ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() 何か良い感じのアジア人3人組だ。イリーナさんともお別れだ。
by sakaidoori
| 2010-07-17 13:27
| (旅)2010年 ロシア旅行
|
アバウト
![]() 丸島 均。札幌を中心に美術ギャラリーの感想記、&雑記・紹介。写真は「平間理彩(藤女子大学写真部OG) 『熱帯夜』組作品の一点」。巡回展「それぞれの海.~」出品作品。2018.8.30記。2577)に説明有り。 by sakaidoori カレンダー
検索
最新の記事
ファン
カテゴリ
全体 ★ 挨拶・リンク ★ 栄通の案内板 ★アバウトの写真について ★ 目次 (たぴお) (時計台) 市民ギャラリー (写真ライブラリー) さいとう 大丸藤井スカイホール (ユリイカ) ミヤシタ テンポラリー af 北専・アイボリー CAI(円山) CAI02(昭和ビル) (大同) アートマン アートスペース201 大通美術館 STVエントランスホール コンチネンタル 資料館 門馬・ANNEX 百貨店 (カコイ・ミクロ) 4プラ・華アグラ 石の蔵・はやし (シカク) ☆道外公共美術館ギャラリー (アッタ) 奥井理g. ★ 案内&情報 ★ 訪問客数 ◎ 樹 ◎ 花 ◎ 山 ◎ 本 ◎ 旅・飛行機・船 ◎ 温泉 ◎ 個人記 ◎ 風景 ◎ 短歌・詩・文芸 ☆★ ギャラリー巡り 写真)光映堂ウエスト・フォー (いろへや Dr.ツクール) JRタワーARTBOX ポルト 写真)富士フォト・サロン 道新プラザ 紀伊國屋書店 S-AIR ◎ 自宅 (ニュー・スター) 札信ギャラリー (マカシブ) (自由空間) 真駒内滝野霊園 サード・イアー (どらーる) 区民センター ★★ 管理人用 山の手 富樫アトリエ (プラハ2+ディープ) ★ギャラリー情報 ★ パンフより 創(そう) (オリジナル) ATTIC 美容院「EX]内 ADP 粋ふよう エッセ ◎ 雑記 ★「案内版」アバウトの写真 ☆北海道埋蔵文化センター ☆三岸好太郎美術館 ☆本郷新彫刻美術館 ☆芸術の森美術館 ☆函館美術館 ☆札幌・近代美術館 ☆モエレ沼公園 ☆旭川美術館 ☆北海道開拓記念館 ☆帯広美術館 ☆関口雄揮記念美術館 (☆夕張美術館) ☆(倶知安)小川原美術館 ☆(岩見沢)松島正幸記念館 ☆(室蘭)室蘭市民美術館 ☆北武記念絵画館 ★その他 【道外・関西】 ー [石狩] [ニセコ]有島記念館 [岩見沢]キューマル 他 [音威子府] [深川] [苫小牧]博物館 [洞爺] ☆小樽美術館 市民ギャラリー [美唄] [江別] [室蘭] [小樽] [帯広] [恵庭] 夢創館 【北広島・由仁】 [函館] [夕張] [三笠] [赤平・芦別] 【幌加内(政和)】 (くらふと)品品法邑 (茶廊)法邑 (カフェ)れんが (ブックカフェ)開化 (カフェ)アンジュ (カフェ)北都館 (カフェ)エスキス (画廊喫茶)チャオ (カフェ・soso) (カフェ)ト・オン (カフェ)アトリエムラ (カフェ)サーハビー 槌本紘子ストックホルムキ記 (画廊喫茶)仔馬 (ギャラリー&コーヒー)犬養 Plantation CAFE BLANC(ブラン) - コレクション ■ 複数会場 公共空間 ー ◎ 風景 新さっぽろg. ー ○ 栄通日記 学校構内 ー ◎ライブ路上パフォーマンス 道銀・らいらっく (コジカ) ▲個人特集 (風景)サイクリング・ロード (風景)札幌・都心 A.S.T(定山渓) 趣味の郷 公共空間・地下コンコース 六花亭 ◎今日・昨日・最近の風景 500m美術館 Room11 アルテポルト・ART SPACE サテライト 【2010年旅行記】 【2010年 ロシア旅行】 【海外旅行】 【2012年上海旅行】 【震災跡地2回目の旅】 【2013旅行記】 ◎ 川・橋 OYOYO コケティッシュ ・我が家 レタラ カモカモ 北のモンパルナス チチ クロスホテル札幌 黒い森美術館 Caballer ▲原田ミドーモザイク画 SYMBIOSIS (ハルカヤマ藝術要塞) 群青(2016) チカホ space1-105 100枚のスナップを見る会 北海道市民活動センター 群青(2018) HUG(教育大文化施設) 札幌グランピスタ 大洋(大洋ビル) - 未分類 タグ
個展(242)
グループ展(183) 油彩画(183) 企画展(153) インスタレーション(115) その他(98) 学生展(93) 現代美術(74) 写真(71) 公募展(70) 写真展(59) 総合・複合展(43) 温泉・山・旅行・雑記(42) 彫刻・金属・ガラス・陶(40) 日本画(38) 北海道教育大学(37) 版画・イラスト(31) シルクスクリーン(26) 藤谷康晴(25) 卒業展(24) リンク
○ 美術関係以外
古い日記 (サカイ・ヒロシさんのブログ) ○ 美術愛好家のブログ Ryoさんのイートアート (サカモト・キミオさんのH.P.) 散歩日記V3 (SHさんのブログ) ○ 表現者のブロブ(相互リンク?) Photo Foto Blue (コバヤシ・ユカさんのブログ) 水彩の旅 (タケツ・ノボルさんのH.P.) アートダイアリー (マエカワ・ヨシエさんのブログ) 画像一覧
最新のトラックバック
以前の記事
2018年 11月 2018年 10月 2018年 09月 2018年 08月 2017年 08月 2017年 02月 2017年 01月 2016年 05月 2016年 04月 2016年 02月 more... ブログパーツ
その他のジャンル
記事ランキング
ブログジャンル
|
ファン申請 |
||