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栄通記

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2009年 09月 08日

1095) ②開拓記念館 「第65回特別展 北海道象化石展!」 7月3日(金)~2009年10月4日(日)

1095) ②開拓記念館 「第65回特別展 北海道象化石展!」 7月3日(金)~2009年10月4日(日)_f0126829_15452882.jpg○ 第65回特別展  
   北海道象化石展! 


 会場:北海道開拓記念館・2階
      (公称2階ですが、実質3階)
     札幌市厚別区厚別町小野幌53-2
     電話(011)898-0456
     ファクス(011)898-2657

 会期:2009年7月3日(金)~2009年10月4日(日)
 時間:9:30~16:30
 料金:一般 500円 高大生 170円 小中生 80円(教職員に引率された小中学生は無料。)

※ 各種イベントあり(パンフ参照)

ーーーーーーーーーーーーーーーーー(9・2)

 (会場は写真撮影不可です。以下の写真は特別に許可を頂いてのものです。それでもお伝えできないところが多々あり、残念な処です。)

 
 (①の続き。) 

 細かい情報の伝達能力は冴えている。刺激一杯の象化石展だ。


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1095) ②開拓記念館 「第65回特別展 北海道象化石展!」 7月3日(金)~2009年10月4日(日)_f0126829_1347316.jpg1095) ②開拓記念館 「第65回特別展 北海道象化石展!」 7月3日(金)~2009年10月4日(日)_f0126829_13474413.jpg









     (↑:北広島市音江別川流域の砂利採掘現場から出土。)

 象には歯が4本しかない。初めて知った。その馬鹿でかい歯が触(さわ)れる。持つことができる。重い。石と同じだ。化石という石だ。これを触りにいくだけでも今展の値はある。○万年前の象の歯だ。臼歯だ。

 この歯が何時頃の、何の歯か?100万年前頃のマンモスと考えられていた。
 ここで現代考古学の年代測定技術が「それは変だ」と主張している。詳しく歯の化学組成を調べたら、ナウマンゾウなのだ。そして、ナウマンの日本最古の化石は35万年頃前で、道内は忠類の12万年前頃。

 なぜ100万年前と判断したのだろう?
 実は発見現場が北広島市の砂利採掘現場で、地層の中からの出土ではないからだ。採掘後の処理過程での発見だからだ。そこは下野幌層(120万年~70万年前)の地層を掘り進んでいる。おそらく、より上層の新しい地層も掘っているのでそこからの出土なのだろう。(砂利採掘場の地図が無いのが残念!調べてあたりをウロウロしに行こう。)

 そういうわけで最新の考古学情報の一端も教えてくれる。考古技術の進歩は著しい。教科書の書き換えの現場がここにはある。


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1095) ②開拓記念館 「第65回特別展 北海道象化石展!」 7月3日(金)~2009年10月4日(日)_f0126829_146426.jpg



 忠類村の発掘現場の様子がビデオに流れている。
 道路工事現場の親父のスコップにカタンと固いものが当たった。
 どれどれと掘って眺めていると、好奇心旺盛な一青年がシャベリ始めた。
 「これはゾウの化石だ。教科書に載っちょッた」
 興奮顔の青年を中心に作業のおっちゃん達は仕事を止めて群がっている。
 (こんなリアルな写真がよく撮れたものだ。作業現場だから関係者がカメラを持ってはいると思うが、こんな瞬間をよくも収めたものだ。誰かが新聞記者を直ぐに呼んだのだろうか?)
 偶然が偶然を呼んだ。たまたま来道していた考古関係者の目に止まり、発見から半月後に詳しい緊急発掘ができた。お盆の時期で道路工事現場はお休みだったのだ。この辺の流れはドラマだ。素晴らしい編集ではあるが、事実の流れに圧倒される。
 そして早くも1年後に本格的発掘になった。忠類村上げての大歓迎行事にも発展した。


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    (↑:過去50万年間の寒暖変化表。上はナウマンゾウ化石の推定年代。
  下の赤印はマンモスゾウゾウ化石の推定年代。)


 古代の温度変化について。
 今の北海道は巨大な離島だ。その島に大型動物である象がサハリン(樺太)や本州からくるには宗谷海峡や津軽海峡が陸続きでなければいけない。曰く、寒冷期に海が後退して陸続きになった時に彼等はきたのだ。

 ここでナウマンとマンモスの生態分布を整理しておきます。
 ナウマンは南の巨象、マンモスは北の巨象。
 だからナウマンは北海道には南から来る、マンモスは北から来る。
 北海道は彼等の生活圏の北限、南限であって、ある時期共生した可能性が高い。

 ナウマンゾウは温暖な天候を好み、草を食べながら適地を移動するわけだ。
 43万年前の寒冷期に朝鮮半島と九州が陸続きになった。その後は離れ離れで現在でもそうだ。本州と北海道もそのご陸続きになることはなかった。その時に西からナウマンゾウは日本にきたのだろう。大陸から離れた彼らはだんだんと北上して行った。その北端は津軽海峡か下北半島かだろう。
 そこに海がある。そして、寒冷期には少しは狭まって泳ぎやすいかもしれない。だが、基本的に暖かい所を好むナウマンゾウだ。何が悲しくて寒冷期の北海道に海を泳いで来たのだろうか?ゾウは海を泳ぐか?泳がなければ来れないのだから、彼らは泳いできたのだ。
 おそらく、寒冷期の緩む中で植生を回復しナウマンゾウの人口膨張が起こったのだろう。溢れた一群が意を決して津軽海峡を泳いだのだ。日本での長い暮らしの間に、かなりの寒冷地適応の体に変身したのだろう。
 それは14万年前頃ではと温度変化表をみながら勝手に想像してしまった。

 マンモスゾウ、寒冷期に寒くなればより暖かい所を求める。陸続きの宗谷海峡を歩いて北海道にきたのだろう。
 北海道の出土例は4万5000年前~3万9000年前、2万5000年前~1万9000年前。この二つのピーク間は寒暖変化表を見ても違いがわからない。分からないが、当時が相当の寒冷期であることは間違いない。


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 忠類村ナウマンゾウ遺跡はどうやらゾウ化石の宝庫のようだ。
 写真は遺跡地層から2m下で発見されたナウマンゾウの足跡地層。足跡を石膏取りしたもの。


1095) ②開拓記念館 「第65回特別展 北海道象化石展!」 7月3日(金)~2009年10月4日(日)_f0126829_14481886.jpg やはり忠類の現場。
 かつてゾウの歯の化石は4個見つかっていた。近年、詳しく調べたところ、一つはマンモスゾウで4万3000年前だと推定された。しかもその歯は発掘近辺からの出土だった。
 現場はやや崖になったところで、道路工事のために崖を削り、その時の表土に近いところにあった歯が下の方にころがり、日の目をみたのだろう。

 作業員がビデオで語っていた。「この崖をけずったら化石が一杯あると思うな・・・」間違いないだろう。今は人目に触れられずにそぐ近くの土中に眠っている。
 





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 添田雄二学芸員です。今展のチーフディレクターです。専門は「第四紀」。第四紀、それは人類の時代と言われている。いつからだったか・・・。およそ200万年前から現在までの地質・考古学の探求をされている方でしょう。

 こうして何かと便宜を計っていただきました。有難うございます。
 僕は博物館学芸員はもっともっと社会に発言すべきだと思っています。考古に対するものの見方考え方、時に自説として仮説なりなんなりを発表してもらいたいと思っています。ミクロやマクロの見えない事柄を言葉として表に出させる。それができる人達だ。目立たない日頃の研究と、発言した時とのギャップ。よろしく!!





 
 

by sakaidoori | 2009-09-08 15:46 | ☆北海道開拓記念館


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