2009年 07月 25日
○ vol.3 交差する視点とかたち 【参加作家】 阿部典英 加藤委(つぶさ) 川上りえ 下沢敏也 会場:コンチネンタル・ギャラリー 南1条西11丁目 コンチネンタルビル・B1F (西11丁目通の西側) 電話(011)221-0488 会期:2009年7月17日(金)~7月26日(日) 時間:10:00~18:00 (最終日は、~17:00まで) ※ オープニング・パーティー ⇒初日 18:30~ ◎ 企画 : 加藤委ワークショップ&スライドショー 7月19日(日) 芸術の森 10:00~13:30 ◎ 同時開催 : 加藤委・作陶展 7月17日(金)~7月26日(日) ギャラリー門馬 ーーーーーーーーーーーーーーーーー(7・17) 中央の空間を広く取り、道内3人の作品が壁際に陣取る、道外の加藤委作品がやや中央にせり出すという配置。過去の展示と同じく、それぞれが自分の領域を守り、そこからの視線が交差し合うという関係だ。違う関係性もみたいのだが、これがこのグループ展の主旨だから、そのことを楽しむ事にしよう。 ○ 川上りえの場合 奥の方にカーテンのように飾られている。壁から1m程離されていて、くぐり抜けて向こう側にもは入れる。微妙な高さだ。入り口にも塞ぐように並んでいるので、「向こうに行くぞ」と少し意を固めてから入る感じだ。 何てことのない作品を、何てことなく行ったり来たり、実物を見たり影を見たりするわけだが、何てことなく気持ちがなごむ。作品を見つめる視界は狭いのだが、あたり全体のひんやりさが部屋の広さと重なって、森の中の木陰の下のような広がりだ。鉄材の丸みや円の形が他の男性作家の角々しさとマッチしている。 この作品は、いわゆるコミュニケーション・アートだろう。鑑賞者が作品と戯れて成りたつものだと思う。しかし、今展の部屋全体の主旨はそこにはなので、遠慮がちな出品になっている。その遠慮感が優しい異質感を醸し出していて、僕には心地良いのだろう。 ○ 阿部典英の場合 最近の阿部典英は攻撃的だ。「性(女性)-宗教(死)-ユーモア」の3点が氏の作品理解の入り口だったが、異性願望が薄れて社会への攻撃性が遠慮なく発揮されている。戦車のような形に豊満な女性ラインを秘めてはいるのだが、男性的突貫精神が強い。要するに作品が直接会話をしているのだ。 異様な物体は何かへの攻撃性の象徴だろう。一応、外向きの社会に対する異議申し立てという形をとっている。だが、長年美術活動をやっていて、創作にアクのようなものが溜まってしまって、それをかなぐり捨てようとしているみたい。美術は自由が根本精神だが、トコトン自由に創作していたか?内省を含めて、自己を奮い立たせようとしている。清々しき大ベテランである。 ○ 加藤委の場合 道外からの招待作家。 作品は磁器です。白い部分は石膏のような感じで、焼き上げの色とのことです。青い部分が釉薬です。こういうのを、青磁器というのだろうか? 磁器色だが、感覚的には陶に近いのでは。地肌感覚をむき出しにした磁に、さーっと釉薬を垂れ流す、その垂れ具合が造形のシャープな鋭さと響きあう。叩けばキーンという金属音が尖った角々からはじき出そう。しかも、色は白地に青をこだわる。 磁という美しさ硬さ鋭さに、陶の泥臭さで包み込んで、焼き物の可能性を追求しているようだ。 作家自身のエネルギーや情念の吐き出しと、空間とのつばぜり合い。磁器作家としては珍しい。一方で、その形はギリシャ神の翼が連想され、造形の研究過程でもあろう。 (会場紹介文に、氏の作品を「陶」と書かれていて、僕の理解に誤解・間違いがあるかもしれません。「磁器」というものがよくわかっていないのでしょう。今後の勉強のために、今の理解をそのまま書いておきます。) ○ 下沢敏也の場合 一連の「森」シリーズ。 今回はストーン・サークル。写真では分かりづらいし、会場で外から見ていても気付きづらいのだが、中を素通りした時にそれとなくわかる。円環の儀場だということが。 できれば中に入って誰かと会話をしたらいいと思う。 高さは首の高さぐらいで、あまり太くはない。相手の顔を見るのに邪魔にならない高さであり存在だ。色も木の焦げた感じとか鉄錆び色とか、極力自然色を出していて、目にも会話にも優しい。とても自然な雰囲気だ。 野原に角材を植える。直立は好きではないからやや曲げる。長く野ざらしにすれば雷に当たって焦げるだろう。角も丸くなるだろう。雨風で朽ちるだろう。夕日に当たれば赤褐色に化粧するだろう。巧みな色具合だ。 9本の柱が助け合い、互いの電波が会話をする。 作家にとっては祈りの場なのだろう。
by sakaidoori
| 2009-07-25 09:03
| コンチネンタル
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アバウト
丸島 均。札幌を中心に美術ギャラリーの感想記、&雑記・紹介。写真は「平間理彩(藤女子大学写真部OG) 『熱帯夜』組作品の一点」。巡回展「それぞれの海.~」出品作品。2018.8.30記。2577)に説明有り。 by sakaidoori カレンダー
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