2009年 07月 16日
○ 第153回テーマ展 『アイヌのよそおい展』 会場:北海道開拓記念館 札幌市厚別区厚別町小野幌53-2 電話(011)898-0456 ファクス(011)898-2657 会期:2009年4月28日(土)~5月31日(日) 休み:月曜日(定休日) 時間:9:30~16:30 料金:無料 ーーーーーーーーーーーーーーーーーー(5・31) 「アイヌのよそおい展」、あまりにも漠然とした総合タイトルにつかみどころの無さを思った。もっと絞り込んだ展覧会という確信があったので、あまり考えないで見に行く事にした。 基本的にはアイヌの晴れ着と、その文様に着目した展覧会であった。 一枚の着物の前と後ろをじっくり見れるような展示の工夫だった。改めて写真で会場を見渡せば少し暗い印象を与えるが、この手の展覧会では明る過ぎるぐらいだろう。 着物をじっくり見せる。その次の目玉は作品の冒頭説明と詳細過ぎるほどの説明文に担当者の並々ならぬ工夫を感じる。 例えば、「アットゥシに似た文様を持つ着物」、「和服仕立てになった着物」、「刺繍だけで文様を付けた着物」、「あでやかな木綿の着物」、「白い布を切り抜いて作った文様の着物」・・・。 文章は着物の来歴やら、こまごましたことが書かれてあるのだが、なるべく博物館的無味乾燥な用語を避けて、具体的に説明しようとしている。 それでも、どうしても文章は硬くなりがちだから、今風にクイズ形式で親が子供に説明できるようにしている。 「よく見よう① アットゥシの文様」、「ここでチェック 着物の文様は左右対称?」、「なぜ文様が付けられているのだろう?」・・・。 普段とはちょっと違ったアイヌの着物の展示で担当者は何を狙っているのだろう? アイヌ文化をより親しんでもらいたい、という一般的な事は当然だ。 むしろ、文化一般からの視点よりも、着物を作った人間の感性や好みに、担当者自身がどれだけ迫られたか、そのことをどれだけ物言わぬ着物に語らせることが出来たかを試しているようだ。それは知の殿堂の博物館で、どれだけ人間臭さを表現できるかを一学芸員として試みているのだろう。 だが、残念だ。担当者は着物に文様を入れるという行為の感動を伝えようとするが、まだ語り足りないと思う。もっと言いたそうで我慢している感じだ。 知識に関しては、もう少し突っ込んだ言葉が欲しかった。制作当時のアイヌの生活模様がもっと垣間見れたらと思う。 例えば、わからない事は一切キャプションには書かれていない。着物の作られた時期に関してはむず痒い思いだ。いったい何時頃の作品なのかはここで何も書けないのだ。 ニシン番屋の親方衆の為に着物を作ってあげたという作品もある。「親方が頼んだから、働き人のアイヌが作ってあげた」とだけ推論している。情報としては非常に興味深いが、これ以上の事は言えないのだろうか? わからないことは触れるべきではないのか?誤解を招くかもしれないが更に推論を重なるべきか?僕は後者をとる。アイヌという民族問題が書くことを難しくしているのだろうか? ↑:オヒョウの樹皮を織って作った着物(アットゥシ)。1995年以前の制作。アメリカ宣教師の収集。 (注⇒模様の角の髭のような装飾に着目。) (注⇒汚れや着崩れも無く、綺麗な作品。ほとんど着ていないのでは?) (注⇒木綿本体に木綿の切れ端を縫い合わせて模様を付けたもの。着物の本体が木綿ということが大事。木綿の着物がアイヌ社会で入手が比較的に容易になった時代。学芸員はそれ以上は語らない。) ↑:あでやかな着物(ルウンペ)。昭和17年以前、道内の作品。N.G.マンローのコレクション。 (注⇒模様が左右非対称です。) ~~~~~~~~~~~~~~ 会場の三分の二は収集されたアイヌ着物と身の回りの小物の類。 残りは現在のアイヌ自身による各種工芸作品。 博物館で古さと新しさが同居しているのには少し戸惑いを覚えたが、それは慣れの問題だろう。アイヌ文様は今もしっかり生きている。博物館が少数民族をテーマにする場合には、こういうセット展示にすべきだと思う。展示の仕方は経験を積んでいけば更に良くなるだろう。今回は新しい作品と古い作品の展示の繫がりが不分明で、セールス・ポイント弱かったと思う。 初めてアイヌの着物を楽しんで見る事が出来た。 今年は知里真志保生誕100年ということでアイヌ関係の催しが多い。良い刺激を頂いた。
by sakaidoori
| 2009-07-16 17:06
| ☆北海道開拓記念館
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アバウト
丸島 均。札幌を中心に美術ギャラリーの感想記、&雑記・紹介。写真は「平間理彩(藤女子大学写真部OG) 『熱帯夜』組作品の一点」。巡回展「それぞれの海.~」出品作品。2018.8.30記。2577)に説明有り。 by sakaidoori カレンダー
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