2009年 05月 23日
○ 一線美術会 第27回 北海道支部展 会場:札幌市民ギャラリー・1階第3室 中央区南2条東6丁目 (北西角地) 電話(011)271-5471 会期:2009年5月20日(水)~5月24日(日) 時間:10:00~17:00 (最終日は、~16:00まで。) 【出品者】 (DMを拡大して下さい。) ーーーーーーーーーーーーー(5・23・土) 多人数なので栄通好みに絞って書きます。 ○ 竹津昇の場合 赤レンガ仕様の古式サイロだ。サイロの入り口を描いているのだが、そこは多分牛舎に繋がっているのだろう。その通路という内面からサイロという外側とその入り口にスポットをあてての絵だ。赤レンガとコンクリートという壁面を描いている。 この絵の面白さは内と外という象徴的な画題を入り口を利用して幾重にも入れ子状態になっていることだ。最終的には出口無しという完結した世界を画家は料理していることになる。 しかも、細密画風に非常に濃厚に画面全体に気を配って描いている。線描、点描ではなくて竹津描と言いたい。細かいストロークで丹念に描いている。ここでの農機具などは殆んど飾りでしかない。竹津描の細かいうねりに見る方の意識が強く向く。空間という存在感、壁という存在、赤茶けた内臓のような絵にこちらが一歩一歩近づいていって、生真面目な竹津リアリティーと会話をするわけだ。 左側の絵は特に不思議だ。 殴り描きで字をかいている。どこか血を連想してしまう。壁に立ち向かう画家・竹津昇はかなり禁欲的に絵画という作業をしている。その禁欲に耐え切れなかったのか、何かの怒りを血として表現したかったのか?絵としては少しばかり大仰な感じだが、絵全体に緊張感があるので許されるだろう。何より、怒りを爆発させる人間・竹津がストレートなのが好ましい。 真ん中のドアの向こう側の空間は手抜きしたような感じだ。皮膚の皮をはいだような艶めかしさがある。全体との調和が取れてない感じだが、絵というむき出しの即物性を表現したいのだろうか?不思議な違和感が新たな方向性なのかと思った。その辺を画家自身は、「まだ未完成な絵で、もっと描き込みます」とのことだった。未完には違いないが、敢えてドアの部分の象徴的空間を未完ながらも発表するのだ。何か期するものがあるのだろ。 大きな絵だがコンパクトに小さく引き締まって見える。丹念に細かく全体を描いているからだろう。厳しく画家は画題に立ち向かっていて、何一つ逃さないという優しい迫力がある。 思わず作品配列に微笑んでしまった。真っ赤に燃える女性作家の作品に挟まれるようにして、川上直樹の世界だ。青い作品がチョッと恥ずかしそうに赤らんでいるようだ。女性陣はドンドンと押し倒し、張り倒しという意気込みなのだが、真ん中の世界は実に実直なのだ。この対比が何とも面白い。 こういう絵は構図とかマチエールが大事なのだろう。それを中心にして語るべきなのだろう。構図に関しては少し型にはまりすぎて硬いかな、という印象だ。もう少し自己流の破綻があればと思う。オヤッと思う意外性があればと思う。 それよりも、僕が興味を惹かれるのは、画面全体から滲み出るヒューマンとかユーモラスさだ。 荒海に屹立する断崖とその上に建つ民家は、「厳しい自然だ。それでも存在しているのだ。心は青空だ」ということを主張したいのだろう。そういう画家の主張とは裏腹に、御伽噺の世界のように可愛くたたずんでいる民家が微笑ましい。作家の人間性が素直に出ていると思う。それらは作家の意図ではないのだろう。いや、意図せずに滲み出ているから良いのだ。
by sakaidoori
| 2009-05-23 23:51
| 市民ギャラリー
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アバウト
丸島 均。札幌を中心に美術ギャラリーの感想記、&雑記・紹介。写真は「平間理彩(藤女子大学写真部OG) 『熱帯夜』組作品の一点」。巡回展「それぞれの海.~」出品作品。2018.8.30記。2577)に説明有り。 by sakaidoori カレンダー
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