2009年 02月 22日
○ 野上裕之・彫刻展 「i」 会場:テンポラリー・スペース 北区北16条西5丁目1-8 (北大斜め通りの東側、隣はテーラー岩澤) 電話(011)737-5503 会期:2009年2月17日(火)~ 注意→会期は延長されました。 休み:月曜日(定休日) 時間:11:00~19:00 ーーーーーーーーーーーーーー(2・21) 昨日は吹雪だった。その日に野上・インスタレーション展を見れて幸いだった。 曇天の光が乱反射すること無く部屋を包んでいる。壁にいくつも貼られた妖しげな物。鉛彫刻だ。 キャンバスの台のような縦長の板、それがこの鉛作品の鋳型だ。いや、これ自体も彫刻作品と言っていいだろう。言葉通りに彫られているのだ。わずかな深さで模様が描かれ、そこに熱せられた鉛を流す。そして正面の壁のような板材に押し当てて鋳型作品は出来上がる。それが何度も繰り返されて作品の数は増していく。同時に熱で板は溶けて深みや広がりを増し、形を変えていく。 大きな板材は支持体と言ってもいいだろう。鉛の熱で燃やされ、そのこげ色が絵として立ち上がっている。鋳型と同様にこげ色は深みを増していく。 つまり今展の個々の「物」は複合的な重なりをしている。それぞれが美術でいうところの作品であり、それぞれが他者のための作品以前の存在なのだ。 そこに熱が加わり、外には風が吹き雪が舞い、刻々変化する光が参加している。部屋はガラスドア一枚で遮られているだけだ。寒い。この場を外界からわずかに身を守る安全地帯ともみれる。だがなんと外との風通しの良い所だろう。自然との防御と闘いと交差空間でもある。 異様な形の鉛、鋳型の板、押し当てられる板材、3者はそれぞれを独立した存在であり、しかも関係しあっている。互いがなければ生まれなかったのだ。その個と全体を一つの関係性で見なければ作家・野上の意思に迫れないだろう。 しかも鉛や木と云う素材の生々しさと、素材を超えた美しさ。つなぐ隙間に音楽がある。 それにしても野上裕之は成長した。 自分自身を余りに素直にストレートに問い続ける青年、そういう印象を持っている。その姿は真摯だ。だが内向きな姿勢が余りに作品に反映され過ぎて、結果的には美のナルシストの面影を残し、界をさ迷っている感じだった。内を見るあまり、外との回路が細かった。 今展、堂々と自分を基点にして他者に熱く語りかけている。 鋳型の板はおそらく自画像だ。模様が人型に見える。等身大の大きさでもある。角張った細さが彼のイメージそのままだ。 その自分から出発して、燃える姿を他者に見せている。 作品を細かく見れば作家の気質の神経質さはある。それを否定すること無く大きく広げ、燃やしている、輝いている。繊細にしてダイナミックな個展だ。 今回は僕の写真だけでも会場のムードは伝わると思う。ムードは伝わるが作家の心は伝わらない。是非見に行ってもらいたい。 (↑:公開展示の為に製作過程が残っている。垂れ落ちた鉛の雫。)
by sakaidoori
| 2009-02-22 18:13
| テンポラリー
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アバウト
丸島 均。札幌を中心に美術ギャラリーの感想記、&雑記・紹介。写真は「平間理彩(藤女子大学写真部OG) 『熱帯夜』組作品の一点」。巡回展「それぞれの海.~」出品作品。2018.8.30記。2577)に説明有り。 by sakaidoori カレンダー
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