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栄通記

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2009年 02月 06日

887) たぴお 「金侑龍・個展」 2月2日(月)~2月7日(土)

○ 金侑龍・個展
   「bright future」

 会場:ギャラリーたぴお
    中央区北2条西2丁目・道特会館1F
    (中通り・東向き)
    連絡先・林(090)7050-3753
 会期:2009年2月2日(月)~2月7日(土)
 時間:11:00~19:00

※ レセプション・パーティー:18:00~
ーーーーーーーーーーーーーー(2・6)

 暗くは無いが、決して心楽しい個展ではない。透明感漂う個展だ。それは作家自身の所在無さの現われと感じた。


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 展示は三つの構成だ。

 ① 祭壇のようなインスタレーション。
 赤い針金を草むらのようにして、その上に不鮮明な写真を並べて光が明滅している。作家だけにしか分からない原風景の象徴だろうか?
 壁にも小さめに同じ方法で展示されている。こちらの写真は不鮮明でもはっきりしている。画家自身だ。僕等は彼を拝むように見ることになる。おそらく青年芸術家が光の力を借りて、何とかして自立しようとしているのだろ。作家の矜持でもあろう。

 ② ユーモラスで不思議な人形&5本の赤い点滅棒&豚の絵。

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     ↑:「労働と想像」。

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     ↑:「Sus scrofa domesticus」。

 作品としては人形や豚の絵は面白いが、作家は「明るい未来」にこれらをどう位置づけしようとしているのだろう?僕はミスマッチと思う。ここには作家の整理されていない思想があるのだろう。「明るい未来」でも何でも良いのだが、そういう教科書的な綺麗な言葉とは矛盾するものを画家は抱えているはずだ。不安とか、自虐的な深層心理が。

 そもそも彼は3世の在日韓国人だ。教育は大学に至るまで民族学校で学んでいる。民族教育を受けているからといって決して視野は狭くはない。というのは、世界の中でコスモポリタン人と強く言える民族として在日韓国人がいると僕は思っている。
 彼らは日本にあっては差別的存在であり、母国の朝鮮半島の国から見れば、国を捨てたさすらい人として同格には置かれてはいない。社会人として日本人にも韓国・朝鮮人にもなれない。アイデンティティーとしての国籍の無さが国家の枠を超えて、一気にコスモポリタン(擬似無国籍国際人)となる。そして、今の日本人ならば冗談としてしか聞こえない「明るい未来」を、願望や祈りの対象としてという面を引きずりながら、真面目に主張しようとしている。

 一方で血の繋がりは事実としてある。それらの象徴が赤い針金や赤い点滅器なのだろう。それを笑うかのように人形や豚の絵があるのではないのだろうか?

 ③ 在日コーリアンに、明るい未来ということでコメントを書いてもらい、その描かれた文字と当人の写真をプラスチック版に転写しての展示。壁に影が写って、二重人物像になっている。

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 ↑:左から、「人、愛」「明るい未来」「活力」。

 笑顔の人もいる。素直な表情だ。質問の中味に腹の底から共感しての言葉というよりも、質問を発する青年の真摯さ真面目さにうたれての素直な気持ちとしての言葉であり表情だろう。
 だがこの透明感は何だろう?笑顔も肉筆の文字も漂白されて時の流れの中に埋没しそうだ。

 哀しきコスモポリタンとして今展を見た。金侑龍君を見た。彼は学業を終えたばかりの23歳の青年だ。楽しみな青年である。


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     ↑:「未来への提案とカウンターへのワンタッチ」。

by sakaidoori | 2009-02-06 22:14 | たぴお


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