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栄通記

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2009年 01月 14日

871) アートスペース201 「札幌国際情報高等学校 美術部展」・終了 1月8日(木)~1月13日(火)

○ 札幌国際情報高等学校 美術部展

 会場:アートスペース201 E室(5階)
    中央区南2条西1丁目7-8 山口中央ビル
    (北向き)
    電話(011)251-1418
 会期:2009年1月8日(木)~1月13日(火)
 時間:10:00~18:00
    
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー(1・13)

 3年続けての鑑賞です。
 一昨年は顧問の先生との会話、昨年はOGとの会話、そして今年は学生との会話がやっと実現しました。
 10号前後の中品が大半ですが、なかなか見応えがあります。昨年までは学年ごとのレベル差が大きかったのですが、今年の1年生はなかなか良い。


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 丁寧に丁寧に対象と取り組んでいます。カラフルさもあるのですが、やや抑え気味です。そのことが却って初々しい。
 自己と対象の関係を考えた時、絵に限らず表現には二つの道があると思う。自分の気持ちを抑えて対象そのものに迫る方法。対象は自己の仮の姿で、自分の気持ちや感情・思想をどれだけ出せれたか。もちろん、完全に表現者を抜きにした対象や、その逆はないでしょう。あくまでもどちらに立脚点を置いているかでしょう。

 今展の高校生の作品は、絵に取り組んで画題をしっかり見つめ表現することによって、対象の意味と自分自身を問い直そうとしているみたいです。指導の先生は日本画を修得された方です。日本画は対象の真理に迫る眼差しや、暮らしの中の可笑しさを引き出すという伝統をはぐくんだ。近代西洋絵画の自己中心的な対象無視という地点に至らずにその伝統の断絶と再生ということで現在があるのでしょう。
 それにしてもどれをとっても恥ずかしくない作品ばかりだ。絵と云うものは難しいとつくづく思う。更に上手くなるとはどういうことだろう?3年生の作品などは十分に独り立ちしている。テクニック過多と思える作品すらある。あとはどれだけオリジナルを高めるかだろう。それはこの美術部の役割を超えている。

 学生と話しばかりしてしまって、あんまり嬉しくて、写真を撮り忘れてしまいました。特に3年生は上手い。会話をした学生を中心に載せます。

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     ↑:2年・竹内綾香、「いくつかの刹那」・油彩。
 僕は顔をダブらせている絵画が大好きだ。そういう作品に久しぶりに合えた。しかも高校生とは・・・。
 三つの顔と定まらない姿、よじれた空間描写ー絵画という刹那的な停止時間に動きをもたせようというものです。と、キャプションにも説明されています。僕はそれも表現しているとは思うが、絵全体が映像的手法を利用して、学校の中での学生の心の襞、心ここに在らずという真理にも迫っていると思う。余りに上手くまとまりすぎているのが、この絵が異次元世界への窓口と働きを薄めてはいるが、それは作家の意図とは別のことかもしれない。

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     ↑:2年・川尻舞、「小さなハロウィン」・油彩。
 カラフルに楽しく描いている。
 明るくて良いのだが、もっともっとはじけるぐらいに明るくて、優しくて、可愛らしい色や姿にチャレンジしたら良いと思う。本人は明るい絵は初めてだと語っていた。そうだと思う。どこかに遠慮がある。礼儀正しくて清楚で素直な感じ。でも、明るい世界にかなりはまって描いたと思う。
 下手だって構わない、大きな紙にクレヨンやパステルやマジックや何でも使って大きく大きく描いたらいいと思う。もっとはじけて、川尻さん自身がもっともっと輝くと思う。


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     ↑:2年・田中亜紗美。左から、「水芭蕉」、「ちっちゃなキラキラ」・日本画。
 絵だけ見るとどこかに画題を見つけに行って、気に入った風景を心象を交えて描いてるように見える。キャプションには登校中の景色や身の回りの公園を描いたとのこと。
 自然を優しく見る目が伝わってくる。まーるく膨らんだ輪郭線がそう思わせるのだろう。かなり細かく描いていると思うのだが、他の学生の作品に比べたら、結構ぞんざいななところがありますと語っていた。そうかもしれないが、なかなか小さい世界まで思いやっていると思う。ぼやけた色の出し具合の技術の高さが、初々しさと重なってなかなか魅力ある作品だ。

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     ↑:1年・林満奈美、「すすめ」・油彩。
 信号や電線を描いた絵を時々目にする。余り色気の無い画題だけに、見る人の興味を惹くのは大変だ。
 登校路の信号機だろう。人はその機械に縛られて歩みを強制されている。きっとこの学生は毎日毎日この機械を見ていて、「赤」「青」で命令し命令される関係から、自分の似姿のような擬人的な何かを感じたのだろう。綺麗に優しい絵だ。見上げる目線と見下す目線が交差している。大きく立ち上がって、自分にゆっくりでも「すすめ」と鼓舞しているみたいだ。


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     ↑:1年・梅川萌、「キャンディーと少女」・油彩。
 パッチリ見開いた目が素直だ。膨らんだ頬が可愛い。キャンディーに包まれた甘い世界、絵がどうのこうのというよりも描きたいことを余りにストレートに表現しているので眩しい。この甘さに酸っぱさが加われば初恋になり、口入れたく無い時が恋の悩みかもしれない。いやいや、恋に悩んでも甘いキャンディーは空ろな幻想を生むかもしれない。
 来年はどんな甘い世界を見せてくれるのだろう?


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     ↑:3年・菅原加奈恵、「芽吹く街」・油彩。
 やはり3年生ともなると可愛い可愛いばかりでは絵は描けないようです。賑やかな花屋さんをバックに傘を持ってこちらを睨み返すような女性。女性の門立ちの不安と孤独、と同時に闊歩して進むんだという意欲、それらを花や傘や雨模様が見守っているようです。

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     ↑:3年・松尾彩香、「ensemble」・デザイン。
 なかなか意味深な作品です。取りあえずは可愛い。ですが、それらの人形を筒に入れ込んで、上から人の重みで圧力を加えて、羊が蓋をする、可愛さに棘がありそうです。
 キャプションには「いろんな国の人々が仲良くなるように・・・」、会場の学生の補足説明によると、作品にしてしまったら、むしろ人種や民族の違いに重心が行ってしまった風のことを語っていました。
 作品自体が作家の心の闇を照り返したのです。決して「作品=作家」ではない証でしょう。そのことが、どれだけ意識して作品を見直すことが出来るか、ここが作品を作る人と表現者を分かつ分岐点だと思う。

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     ↑:1年・三上智子、「そんなバナナ」・油彩。
 バナナの花言葉は「風格」とのことです。それぞれのバナナ、個性的なバナナということです。メインのバナナはどれだか分かりますか?青いバナナです。熟していないのです、どんな風になるのかと可能性を楽しんでいます。
 それにしても、ほんの少しエロチックでおすましした少女達を連想してしまいます。グラスの透明感、おしゃれなドレスです。どんな踊りをするのでしょう?背景の黒が何とも渋い!食べられないように気をつけて。


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     ↑:1年・三上夕貴、「牛」・デザイン。
 「牛」とは変なタイトルです。三上さんのニックネームは「ウシ」とのことです。自画像です。見かけの自分は紙に覆われた皮、内側の自分がその見かけの自分を中から輝かせる。直向な作品です。


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 こういうデザイン風な作品もかなりありました。


 しっかりしたキャプションが付いているのがこの美術部展の大きな特徴です。絵に対する思いを綴っています。会場では文章は面倒臭くてあまり読んではいないのですが、紹介に当たっては全部の文章に目を通しました。良い文章だと思います。
 顧問の先生の作品も今回はあります。数は少ないのですが、卒業生の作品もあります。
 もう一部屋借りて、先生やOGなども展示をすればと思います。卒業生も良い励みになると思う。
 来年もよろしく。
 

by sakaidoori | 2009-01-14 23:57 | アートスペース201


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