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栄通記

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2009年 01月 14日

869) 時計台 「第3回 にかわえ展」 1月12日(月)~1月17日(土)

○ 第3回 にかわえ展 

 会場:札幌時計台ギャラリー
    中央区北1西3・札幌時計台文化会館
    (東西の中通りの北側にあるビル)
    電話(011)241ー1831
 会期:2009年1月12日(月)~1月17日(土)
 時間:10:00~18:00 
     (最終日は、~17:00まで)

 【参加作家】
 朝地信介 池田さやか 今橋香奈子 笠嶋咲子 熊崎みどり 駒澤千波 富樫はるか 富山真佑 内藤まゆ 野口絹代 野口裕司 百野道子 桝本士乃 丸野仁美 ミクニキョウコ 宮町舞子 村木愛 吉川聡子

ーーーーーーーーーーーーーーーー(1・13)

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 広い会場に入るなり思ったことは、「やっと展覧会らしくなったなー」という印象です。それは、今年の代表作、意欲作を発表しているということではなくて、普段、こんなことをしたい、あんなことをしたいということをきちんと後付していることです。「お仲間展」から脱皮していることです。
 このグループ展は教育大学札幌校の日本画研究室展として出発した。担当教授の定年退官にともなって、研究室は消滅した。その息吹を残すような形で若手のOBが一昨年から引き継いだのだが、研究室(教室)展のムードをそのままにして個性薄きものだった。「これでは遺憾」と、思ったのですね。グループとしての問題意識が、参加作家の意欲を高めたようだ。
 
 「グループ展」になったが、だからと言って素晴らしい作品が集まったということではない。作品の質はともかくとして、意欲薄き作品作家には会員相互が厳しい目を向けあって欲しい。

 結構楽しんだので全員を載せたいのですが、それは無理です。好みのままにいきます。


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     ↑:野口絹代、「某春」・F50。
 以前の細く暗い人物(青年)画に比べて、豊満で裕福な女性画だ。傲慢な性格が垣間見える。最近は朱系の色に独自色を深めている。それよりも、単純に上手になっている。良いことだ。
 ただ、以前の画題としての現代青年への関心が、未熟な腕も手伝って青年画家としての味わいがあったが、そこんところが薄らいでいる感じがする。


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     ↑:百野道子、「縁側に腰掛けて」・F20。
 女性を綺麗に美しく描くことが多かったが、こうして後ろ向きの子供を描いた絵を見ると嬉しくなってしまう。力強い輪郭線を得意にする作家だが、輪郭無視の絵も描く人だ。もっともっといろんなことを試みたらと、いつも願っている。


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     ↑:池田さやか、「淵」・183×93cm。
 暗き水底に沈んでいく。立つ髪の毛は沈むスピードを思い描く。僕自身はもっと妖艶な絵を、スカートから足元にかけて禁断の色合いを見たいが、果たして画家の意図はどの辺にあるのだろう。空ろな世界でのシュールな夢を画きたいのかもしれない。


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     ↑:宮町舞子、「美しい珈琲と。」・F30。
 カラフルな世界です。もっともっと美しくカラフルに、とも思うのだが、作家は静物画的な空間を色だけで埋めるのを欲しないみたいだ。


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     ↑:富樫はるか。左から、「フラッグツリー」、「夜の散歩」・ともにM20。
 小品で独自の世界を築いていく富樫はるか。「フラッグツリー」とはとてもユーモラスだ。シンプルな絵だが、白い部分はなかなか丹念に花柄が散りばめられている。
 何かしら物語が始まりそうだ。喜怒哀楽の人間の話か、不思議な世界とこちらとの行き来の日記か、暗い物語、明るい物語・・・。


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     ↑:駒澤千波、「dragonfly rabbits」・61×273cm。
 ただうさぎが並べられているだけだが、なかなか見せてくれる。うさぎの可愛さにおもねらないのが良い。もともと数珠繋ぎによる物語の好きな画家だ。その色と動物の連環が、僕たちを違う世界まで連れて行って欲しい。


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     ↑:吉川聡子、「Goth-Loli」・160×260cm。
 彼女の新作には期待値が大です。
 古風な屏風に妖しげな女の子が二人、人形遊びだ。こういう絵の前で座り込んであれやこれやと誰かと語り合いたいものだ。他人の夢物語を聞きたいものだ。絵の立ち姿の女の子かに上からにらまれたいものだ。恐さが快感になりそうだ。
 タイトル、どういう意味だろう?

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     ↑:朝地信介、「或る表現形 Ⅱ、Ⅲ」・ともにS50。
 朝地信介はいろんなことを試みている。今作も「実験画」といえるだろう。最近は画題と背景、いわゆる「地」と「図」に拘っている。それはどちらがどちらだかは分からないということと、過剰なまでの形態の肥大化や運動をキャンバスの中で試している。その姿勢はかなり以前からのものだが、細部に拘らないで、大きな視点が最近の特徴だ。
 試み作ではるが、画家のやる気満々な姿勢がキャンバスからほとばしっている感じで、好ましく見ている。今作は、海老茶の背景部分がかなり独り立ちしている。一枚の絵の中で、「字」と「図」がともに主張している。線の主張を減らして、油彩画的な画材のボリュームで厚みを持たせている。
 さしずめ抽象画と言いたいがこれはこれで表現の一里塚だろう。次回もよろしく。


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     ↑:ミクニキョウコ、「偶然の音楽」・キャンバス 顔料 岩絵具 油絵具 181.8×227・3cm。
 他の方は日本画ですが、この作品は油彩画です。画材に日本画の画材を使用しているのでしょう。
 昨年は道展では最高賞を確保しました。その絵は好きな犬を画かかない抑制が好結果をもたらせたと思う。
 今展、油彩画代表?として大作の出品だ。犬と人が視線と方向を無視して画かれている。
 彼女は堅実な画家だと思う。僕は主題の生き物は無視して、背景ばかりを見てきてしまった。平面的な世界にいろんなものが散りばめられている。しっかりと描かれている。時間が止まったかのような世界で、静と動をいかに膨らませるか。画題としての日常に拘る画家が、どれだけ絵としての非日常を実現できるか?


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     ↑:野口裕司、「DOROP」・タキロンプレート他 直径80cm。
 床の上にいかにも踏んでくださいと言わんばかりに置かれている。踏むにはもったいない、というよりもどこか痛ましい。
 イメージのような模様画、僕にはトルソに見える。壁のトルソは不思議ではないが、床のトルソはきつく迫ってくる。切られた胴体として転がっているようだ。血が死にきれなくて皮膚から浮かび上がってきている。


 
 今展では同一テーマによる制作という企画を試みています。
 テーマは「」。本当に小品です。壁に17点がゆったりと並べられ、一人野口作品だけが棚で主張しています。
 自分を落ち着かせるための小品ではなく、「見せる」小品はとても大事です。特に大作中心の方はなかなか小品が描けない。
 細やかな筆さばき、日本画ならではの小さな世界での線(輪郭線)の味わいでした。

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 ↑:左から 富樫はるか・百野道子・吉川聡子

by sakaidoori | 2009-01-14 17:00 | 時計台


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