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栄通記

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2008年 10月 01日

770) テンポラリー 「新明史子・展」 終了・9月16日(火)~9月28日(日)

○ 新明史子・展

 会場:テンポラリー・スペース
     北区北16条西5丁目1-8
     (北大斜め通り・西向き、隣はテーラー岩澤)
     電話(011)737-5503
 会期:2008年9月16日(火)~9月28日(日)
 休み:?(月曜日が定休日です)
 時間:11:00~19:00
     (最終日は、~18:00まで)
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー(9・28)

 2段組のモビールが7組吊るされてある。それには写真から切り取られた人物がぶら下げてある。壁には小さなボックス・アート、セピア色でポツンぽつんと展示、昔の家族のスナップ写真だろうか?

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 今僕は、写真を見ながらこの感想記を書いている。
 宙ずりになった被写体としての人物・写真は、閉じ込められたアングルの中では何ともいえないリアルさがある。それは二重構造としての写真が脳で再構成されるときの虚像であろう。意識が写真のみに限定される知的操作といっていいかもしれない。
 だが現実の展示空間はもっと軽やかなものだった。
 もし「新明史子」という名前も画歴もしらないならば、もし同じように外光の当たる札幌資料館で無名の人として作品を見たら、どれだけの人があれやこれやと頭を働かせるだろう?

 新明史子は「自分自身の家族」にこだわる。
 文学で言う「私小説」だ。だが、自分をさらす事に一般化なり普遍化しようとはしない。評価という価値基準からずれた所で美術作業をしている感じだ。そうは言っても、不特定の第三者に「新明史子の過去の像」を見せてはいるのだが・・・。

 今展は実に軽い。
 家族の存在の軽さの表現というよりも、いままでの自分の過去への距離感に対する重い服を一枚脱いだ感じだ。おそらく一人の人間が家族へ参入したからだろう。その子供と共に戯れるかのように、モビールを作り、ぶら下げて、揺らして、眺めて母子関係の時間を楽しんでいるようだ。

 だが、この現実的な遊びは新明・表現様式に亀裂を生んだかもしれない。というのは、彼女は現在を問わない作家だ。現在を表現しない作家と言うべきかもしれない。常に自分の幼少時が舞台になっている。
 今展に不思議な現象が起こってしまった。というのは、新登場の彼女の子供の写真は「現在」なのだ。その現在の子供の写真と過去の自分の幼少時の写真を同列に並べている。同時に、系譜的家族構成も展示してある。

 モビールはあたかも系譜のような意図で見る者に訴えかける。同時に家族構成員の力関係も暗示している。それは「私」中心主義であり、「女」の系譜になっている。
 例えば、「夫(父)ー私(妻・母)-娘」の組み合わせ。普通は「父・母ー娘」になるのだが、新明史子の場合は「夫ー私・娘」なのだ。あえて平等主義にこだわるならば、「私ー夫・娘」をもう一点追加すればいいだろう。そうはしない。
 「男」もぶら下げてある、「夫」や「祖父」として。だが、それらは家族が男女を必要とする範囲を超えてはいない。だからか、作家の「父」はいない。
 子供が「女」であったのは幸いなのかもしれない。オトコ性を明確化する必要がないから。

 子供の出現によって、過去に重きがあった新明・私小説が現在という時空に流れ込もうとしている。おそらく、「過去ー現在ー同時性」ということで次展からは進むであろう。「夫・男」は「娘」との関係で出現機会が増えるであろう。「父」という呼称はいつ与えられるのだろう?
 それらは作家の表現の深まりの中で増殖していくのか?たんなる広がりとして発展していくのか?今展は今後の表現のターニング・ポイントのような気持ちで鑑賞した。

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 (以下の展示のための参考にして下さい。現場の写真は常に動いていて、全貌の撮影は不可能です。ただ、上の写真はモビールの力関係が分からないので、以下の写真で確認して下さい。概ね左回りの展示紹介。)


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 ↑:「母のスカートを揺らした風は」・2088年。(以下、同じ)

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 ↑:「とおき窓より」・2008年 箱。(展示は5点、全て同タイトル。)

by sakaidoori | 2008-10-01 11:49 | テンポラリー


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