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栄通記

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2008年 08月 14日

728) テンポラリー 「アキタヒデキ・個展 『点と点と展』」 8月8日(金)~8月17日(日)

○ アキタヒデキ・個展
    「点と点と展」

 会場:テンポラリー スペース
     北区北16条西5丁目 
     (北大斜め通り・西向き、隣はテーラー岩澤)
     電話(011)737-5503
 会期:2008年8月8日(金)~8月17日(日)
 休み:月曜日(定休日)
 時間:11:00~19:00
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー(8・12)

 1979年生まれ/北海道出身/札幌在住
 2001年 札幌デザイナー学園卒業
 2008年 CAI現代芸術研究所アートスクール卒業 (DM様式のフライヤーから)

 開廊15分前に訪れた。早すぎるのではと心配したが、ドアは大きく開けられていた。まるで店開きの準備のように、日差しを身に受けて忙しく嬉々として動き回る青年がいた。そして始まりから終わりまで青年の親切な応対を受け、作品を間にして話を交えた。青年は少し慇懃なくらいに背を円め、身を屈め、せわしなく手を動かし、座をすすめ、お茶をすすめ、アイスをすすめ、溢れる作品への思いを丁寧に丁寧に語ってくれた。

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 (↑:作品を見つめ、淡々と語っている青年こと、アキタヒデキ君の横顔。あどけない笑顔とナイーブというか繊細な目元を覚えている。)

 『どこのどなたかは知りませんが、こんなに早くに見に来てくれて嬉しいなー。しかも二人で!今日は朝から暑いなー、そうだそうだ、冷たいお茶を飲んでもらおう。友人がアイスを差し入れてくれた。冷蔵庫もないから食べないと溶けちゃう。さーさー、溶けないうちに皆で食べましょう。今日は暑いなー、良い天気だなー、素晴らしい一日の始まりだ。中年夫婦のお出ましだ。何て素敵な始まりなんだろう・・・・』・・、青年の体からそんな言葉が聞こえるようだった。


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 ↑:入り口から正面。
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 ↑:入り口から左側。
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 ↑:入り口から右側と、2階が少し見えます。

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728) テンポラリー 「アキタヒデキ・個展 『点と点と展』」 8月8日(金)~8月17日(日) _f0126829_11223340.jpg
 ↑:2階の様子。

 写真でも分かるように、作品は非常にニギニギしている。表現手段の核として写真があるようだ。2階は合成写真プリント、1階は下地に写真を転写して、その上からいろいろとペイントした作品群という構成。

 タイトルの「点と点・・」というのは、デジタルとしての写真が「点」で、それの連写や合成、それらを隠して肉筆による絵画化がアナログとしての総合的な「展」ということだろう。
 点と点を結ぶ、アナログからデジタルへという感覚は画題としては一つの方向を示しているようだ。それは「人と人との触れ合い、邂逅」ということへ。当然「愛」ということが大きなテーマだろう。

 ビジュアル的表現の強い若き青年が「愛」をテーマにした時、日常生活での被写体の対称は「女」だ。そして「性」だ。
 ここには露骨な性表現は一つもない。それ以上に「女」なり「人」を正面から「見る」写真はほとんどない。禁欲的に「人」を撮らないのだろうか?そうではなさそうだ。彼の内向性の強さが優しさがビシッと対象を見詰めることを阻んでいるようだ。

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 その代わりに象徴的な手段を用いている。性の象徴としての「ピストル」、「花」、「手」・・・。そして、それらは丸みを帯びて優しい。
 会場はニギニギしいと語った。だが、驚くことに非常に静かに落ち着いて見れる。作品が外光と結ばれている、開放的な場ということもあるかもしれない。
 作品は几帳面に丁寧な展示だ。この種の表現にはありがちなランダムさは微塵もない。「優しく、しっかり見てもらいたい」という作家の気持ちが伝わる。この優しさが会場を「見た目のニギニギしさ」から、「ひた向きな青年臭さ」に変えている。
 唯一、彼の肉声が伝わるテーマがある。「口」だ。
 口は表現者によって、いろいろなアプローチが可能だ。思いや唄がそこから奏でられる。つつましさ、接吻・・。美の象徴でもある。
 一方、「食い殺す」、「ののしる」、「吐き捨てる」所でもある。
 アキタ君は「手」にロマンを見出し、「口」に悶えているようだ。

 上の手の組み合わせの作品、9×9=81枚の「二つの手の連作写真群」、今展の代表作だろう。現在のアキタヒデキの人を見る「やさしさや願望」が静かに踊っている。
 ここが原点だ。「愛」の裏には「憎しみ」がある。「邂逅・抱擁」の裏には「別離」がある。それらが作品に現れることことが無くても、それらが作品の影に寄り添って作品が独り立ちすると思う。ドロドロした作品の裏側に諦念のような静かさがあるように。


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 最後に、会場のテーブルとソファーについて。
 会場にはその広さに反して、大きな3点セットの家具が場を占有していた。しかも古い。アキタ君に伺うと親族の思い出の品だとのこと。それ以上は語らないし、聞きはしなかった。
 これが最初から予定されていたかどうかもわからない。アキタ君は意図的空間を強引に作るというタイプではので、何らかの心理的理由によるものだろう。
 不思議なことに場違いのような家具がアキタヒデトシの分身のような活躍をしていた。茶会のもてなしの小道具の様になったのだ、大きいのに。
 おそらくアキタ君は今展期間中は限りなくここに居るのだろう。朝も昼も夜も。その振る舞いは鑑賞者にとっては意見や好みの分かれるところだろう。と云うのは、ギャラリーを私的空間にしたのだ。だからアキタ君は訪問者を一所懸命にもてなす。「何にもない所ですが、お茶だけでも飲んで下さい。テーブルに落書き帳を用意しました。好きに遊んでください」と。

 これほど徹底した展覧会を知らない。何事も徹底すべきだと思う。そのソファーとテーブルに感謝しよう。


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by sakaidoori | 2008-08-14 11:45 | テンポラリー


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