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栄通記

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2007年 03月 05日

88) 芸森 「ドラマティック・コレクション」 ~3月14日(水)まで

○ ドラマティック・コレクション  -ドラマを綴るのはあなたー

 場所:札幌芸術の森美術館
    電話(011)591-0090
 期間:1月20日~3月14日(水) 
 時間:9:45~17:00 (入館は16:30まで)
 料金:一般500円 高大生200円

 札幌と旭川の美術館の収蔵作品による絵画・彫刻・ガラス・写真などの展覧会。「観るものの感性を刺激する」とパンフには謳っている。むしろ、常設展の場合は美術館関係者の工夫が問われると思う。収蔵品は美術的価値の定まった物が大半だし、何回も見ている作品もあるわけだから、そういう作品の新たな視点・切り込みが学芸員には求められるのだろう。いい展示の時には褒めよう、キュレーターなどと分けのわからない横文字は使いたくない、学芸員さん、見られているのですよ。

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 写真を除いて10名の作品。3名3作品はアクセントのような展示なので7名の作品と写真展になっている。大きく区切られた空間に一人一室という贅沢な展示。今展の「感性の刺激」とは作家独自の広い空間がどれだけ心地良く主張しているか、ゆっくりと部屋を移動する時の流れは、次は何が出てくるのだろうと期待を持たせる。

 第1室、船越桂の不思議な雰囲気の3体の人物彫刻がポツンポツンと3角形に広い部屋に置かれている。5点のデッサンが入り口近くの壁に展示されている。直ぐ目の前に『一人で二人』と呼びたい「雪の上の影」。この作品は道内の方が画題指定による注文作品とのこと。その後直ぐに芸森に寄贈された。感心な方だ、有り難う御座います。左後方に大胆な形態の「夜は夜に」、右後方に「午後にはガンダー・グローブにいる」。後者の作品は次の部屋に出入りするのに常に目に入る。大柄の西洋人がリラックスした服を着て立っているだけなのだが、なんとも言えない距離感、存在感。昨年、何度も旭川美術館で見ているが、こんなに離れた距離で見るのは初めてだ。船越はジャコメッティーに多大な関心があるという。この作品の横にジャコメッティーのを並べて見たいものだ。

 次は難波田龍起の油彩「不思議な国D」、「生の交響詩」が並んで展示、5m離れた向かいにソファーがあり座ることを強制しているようだ。もちろんリラックスして鑑賞して下さいという意味ではあるが。
 通路上を利用したかたちで高橋禎彦のガラス「花のような」、ねずみ色のパンチ絨毯に3組にわかれて床に展示されている。靴を脱いで絨毯に腰掛けることができる。僕はここに座って次室の八木伸子の4点の油彩を斜めから覗き、首を反転しては高橋のおもちゃのようなガラス作品を眺めた。難波田と八木に挟まれた色鮮やかでポップな高橋の作品、不思議な組み合わせだ。彼は吹きガラスでは屈指の作家とのことである。

 われ等が八木伸子、見る順番に「人形のある室内」1981年作、「バラ色のテーブル」1986年作、「冬の人形」198年作の3作品が並びL字の横の壁におなじみの白い冬景色と窓のある「二月の室内」1991年作がある。難波田同様に狭い空間に『密着して見よ』という展示。並んだ3作品は淡いピンクが画面一杯に広がっている。特に「バラ色のテーブル」はソファーのおおらかな形を見せたいだけの作品で何の飾りも無く、あっけらかんとしたピンクの世界が目を見張る。八木さんにピンクの時代があったのですね。

 暗がりの部屋に砂澤ビッキの彫刻。「樹華」「神の舌」「午前3時の玩具」。少し窮屈な感じだ。
 現在、アルテピアッツァ美唄でビッキの彫刻展が旧小学校2室に展示されている。そこにも「樹華」があるが、ここよりも大きい。指し込められた柳の枝は市民の手によるものだという。教室の中央に外光に照らされ大きく高く開いていた。タイトルは忘れたが10体ほどのお面が素晴らしい。彼の初期の作品でデフォルメとユーモア、機智に富んでいる。3月17日まで、無料です。

 暗がりから抜けると作品はそんなに無いが明るくて広い部屋に辿り着く。隅っこに深井隆の「流れゆく思念ー青空または瞑想」「逃れゆく思念」というタイトルの椅子が2個置かれ、その周りに鑑賞者用の椅子が10個ほど並んでいる。椅子に座って椅子を見る、なるほど。猪八戒のようなアンティークな椅子に本とリンゴが置かれ、背もたれには飛び立とうとする金色の羽が付けられている。作品の完成度もさることながら、暗喩に満ちている。

 離れた隅に神山明の「いつもの道に迷い込む」がメリーゴ-ランドのように几帳面に置かれている。木だが丁寧に加工され、オイルステンで全面茶色に塗られている。学校生徒の共同作品のようだ。作家の強い個性は抑制され、どこか機械仕掛けの誰もいない遊園地になっている。円形と階段につながれ永久循環運動に身を置いているようだ。

 やっと最後に辿り着いた。今展は入り口の船越と出口の写真展が見せ場だ。
 「10人の写真家による被写体四谷シモン展写真」、1972年。四谷シモンの発案で、彼が選んだ当時は新人の10人のカメラマンに四谷自身を撮らせての写真展だ。僕は全然知らないが伝説の写真展ということだ。展示は10人の写真作品と、その後に発行された書籍からの四谷とカメラマンとの互いの相手評の抜粋記事である。シモンの服装、表情の違いがカメラマンの表現力の違いだ。シモンの企画力を世に知らしめたことだろう。30年経っても面白いとしか言いようが無い。1972年といえば70年安保闘争以後、政治の時代が終わり、満たされぬ溢れるエネルギーを経済文化に立ち込めた時期だ。熱い時代から間違いなく一呼吸置いた時代へと移行する時だった。
 参加作家、朝倉俊博、有田泰而、石本泰博、加納天明、沢渡朔、篠山紀信、十文字吉野生美信、宮崎皓一、森田一明

 アクセント的作家、アリシア・スカヴィーノ、澤田政廣、船越保武

 アイポッドによる音声&映像ガイドも無料で利用できます。戦略上出口で借りることになります。いろいろなアンケートで展示会を盛り上げようと工夫もしています。

by sakaidoori | 2007-03-05 23:55 | ☆芸術の森美術館


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