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栄通記

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2013年 11月 05日

2290)「第3回 全道展 新鋭展」 大同 10月31日(木)~11月5日(火)

  

  
第3回 全道展 新鋭展    
  



 会場:大同ギャラリー 3階4階
     中央区北3条西3丁目1
      大同生命ビル3階 4階
      (札幌駅前通りの東側のビル。
       南西角地 。)
     電話(011)241-8223

 会期:2013年10月31日(木)~11月5日(火)
 時間:10:00~18:00
     (最終日は、~16:30まで)

 【参加作家】

ーーーーーーーーーーーーーー(11.3)

 6月に第68回全道展が開かれた。その時の作家の中から選抜された作品展。一般、会友作家のみで、今後の飛躍活躍を期待しての「新鋭展」だ。

 今年の全道展も何回か載せました。もっと載せたかったのですが、相変わらずの中途半端で終わってしまいました。ということで、今展で会員以外の動向が少しは垣間見えるのでは、そんな思いでの報告です。

 4階は絵画のみの展示。その部屋を中心にしての感想記です。3階は立体、版画、工芸などの展示。


 4階の部屋を左回りでぐるっと載せます。


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 地味だな~、見た瞬間の第一印象です。公募本展の賑やかさ華やかさに比べると、実におとなしい。個々の作家は、あり合わせの作品を用意してはいない。しっかりと普段の自分を見せている。それは作品を見ればわかる。それでも、ワクワク感からは遠く、全体が静かに見える。何故だろう?


 お気に入り3点をまずは掲載します。写真説明文の()は出品資格です。

 (以下、敬称は省略させていただきます。)


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   ↑:石本久美子(札幌市)、「画室から」・S100 (会友選抜)。


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   ↑:(上掲作品の部分図。)



 バリバリの若手作家だと思っていた。作品が発散する実直で強い緊張感、徹底的に精緻に具象スタイルでの臨場感、学生でなければ30歳前後の人と思い込んでいた。
 初めて作家にお会いした。それなりに年配の普通の主婦?であった。モデルは娘さんか?。

 美大を卒業後、30年間はほとんど絵を描かなかったとのことだ。6年前からの再スタート。
 「モノトーンの写真が好きだから、やっぱり絵画も白黒ですね。輪島進一さんもモノトーンですが、あの方は線ですね。私は面なのです。背中を描いています」

 技法の話になった。納得のいくまでキャンバスを白で塗り固める。分厚い白地の上に黒色で人体を描く。間違うと、アウト。重ね塗りでも黒を消せない。緊張感のある白い下地が汚れて、修正不能とのことだ。

 それにしても、その年齢で持続する緊張維持には驚かされる。
 「背中」という言葉にも驚いた。今年の全道展作品は後ろ向きの人物像だった。何かの象徴と思っていたが、明確に背中を描いていたのだ。今作も、ポーズは女性美なりを、やや誇張気味に描いて何かの主張表現と思ったのだが、背中を描くことが目的だったのだ。
 以上、伺った話を中心にしての感想です。この緊張感が何を目指しているのか?今後も気をつけて見続けよう。




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   ↑:小林麻美、「あなたと私の目の前で、無数の今が起伏する」・F20 (佳作賞)。


 久しぶりに本編に登場する小林麻美だ。もっとも、僕のパソコンの壁紙は彼女の今年の全道展出品作品だ。毎日見ているわけだ。ただ、壁紙は作品鑑賞からは遠いということがよく分かった。


 小林麻美ワールド、独特の感覚の持ち主で、その感覚に惚れ込んでいる。だが、画題に肉親が大きく表れ、その存在が強くなり始めた頃から、栄通記への登場が途絶えがちになった。
 僕にとっての小林絵画の魅力は強引な空間表現にあった。彼女の左右の目は斜視ではないが、どこかピントが常人とはズレている感じだ。しかも底なしの強さがある、そこが良い。肉親の情を表現されても、それは画家にとっては必要な行為なのだが、他人である僕にとっては関心外であった。彼女独自の空間感覚は僕の単なる勘違いかと思ったりもした。おそらく、小林時空の中で、画家にとっての大事な人がどんな形で再生できるかを、止むに止まれぬ気持ちで取り組んでいたのだろう。彼女の持っている倫理観みたいなものが、あまりにストレート過ぎで、黙って見ているだけになってしまった。

 
 今作、網膜を描いていた人が、あたかも網(盲)点にギアを入れ替えたみたいだ。新たな空間作りに励んでいる。タイトルが示すように、「時」と「他者との関係性」への拘りを強くしている。長いタイトルは理解してもらいたい作家の我(が)であろう。どこか挑発的な我で、「還ってきた小林麻美」を感じてニンマリした。




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   ↑:西村徳清(羽幌)、「Hejira(逃避行)」・F100 (会友賞)。


 映画のワンシーン、あるいは漫画の一コマみたい。

 黒い背景・・・そこには階段もあるのだが・・・を背にして、リクルート・スタイルの青年が淡々と歩んでいる。背景は暗いはずなのに、壁は青白い。四角四面を明解にして浮き出している。闇空間での明解な青白さは矛盾しているのだが、絵画はそんなことをきにしない。お構いなく淡々と絵画世界を作っていく。

 先に紹介した石本久美子や小林麻美のような強さはない。だからか、物語性が顕著になる。とは言っても青年に感情移入するような世界ではない。全てが淡々とある。「闇」とか「壁」とかの象徴性も希薄だ。浮遊するでもなく、乖離するでもなく淡々と進んでいく。・・・それを「逃避行」と作家は呼ぶ。



 

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   ↑:尾澤和子(旭川)、「還る川(かえるかわ)」・F100 (会友選抜)。



 ユーモラスで面白い絵だ。ただ、ちょっとひ弱な感じだ。構成とか、空間表現とか、空間処理への意識が強すぎるみたいだ。このムードで、あんまり構えなくて、もっと正直に「還る川」にしてもいいと思うんだが。
 ところで、どこが「還る川」なんだろう?地形図を想定しているのだろうか?海岸とか、湾とか、波とか、雲とかを描いているのだろうか?楽しそうな感じの作品なのだが、あんまり楽しんではいけないのだろうか?自信を持ってもっと闊歩したらと思った。




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   ↑:佐藤静子(苫小牧)、「パンタ・レイ」・F100  (会友選抜)。


 
 何を表現しているのかは全く分からないが、形が面白い。何と表現したらいいのだろう。皿のようなものが浮いていて、どこか所在なげで、それでいてカマキリのような変な物体、それは生き物?

 これを書きながら、「パンタ・レイ」の意味を調べる。なんと、「ヘラクレイトスの『万物は流転する』」とある。絵の分かりにくさは楽しみになるのだが、こういう哲学用語を持ってこられると困ってしまう。この作品ならば「無題」のほうが夢が膨らむのに。それでは作家の思想性が見えなくなるのだろう。




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   ↑:竹生洋子(札幌)、「記憶の人」・S100 (新会友)。



 無骨な裸体が赤ちゃんを小脇に抱えている。微笑ましい作品だ。
 人物造形を追求しているのだろう。ピカソのキュビニズムではないが、この裸体像から普通に赤子への泣き笑いを表現しても良いと思うのだが。




 以下、3階の会場風景です。


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   ↑:阿部榮(札幌)、「大気不安定」・110×90×70㎝ (佳作賞・新会友)。

by sakaidoori | 2013-11-05 01:45 | 大同


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