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栄通記

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2010年 12月 18日

1398) 時計台 「鈴木悠高・個展 -Evolution- vol.5」 終了・10月18日(月)~10月23日(土)

○ 鈴木悠高・個展

     -Evolution- vol.5



 会場:札幌時計台ギャラリー・2階B室
     中央区北1西3・札幌時計台文化会館
     (東西に走る仲通りの北側のビル)
     電話(011)241ー1831

 会期:2010年10月18日(月)~10月23日(土)
 時間:10:00~18:00 
     (最終日は、~17:00まで)

ーーーーーーーーーーーーー(10.16/22)


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     ↑:(上下同じ作品。全部で横一列8枚の展示。)

 縦長の四角い部屋に入ると・・・壁一面に、否、一面の壁だけの作品展示だ。F60(1303㎜×970㎜)鈴木黄色が8名だ。しかも、照明を落とし、作品だけにあたるようにしている。暗がりの沈鬱な空間に黄色が四角く浮き出す。余計なものは一切見せずに、「視野一杯に黄色を見ろ!集中せよ」という展示スタイルだ。
  美術館顔負けの展示スタイルは、間違いなくアッパレだ。画家のデザイン、空間構成感覚には驚く。こういう展示は企画者なり、当事者以外ならば一つの試みとして実行できる。だが、画家自身が演じるには勇気がいる。有料で部屋を借りたのだ。普通は多め少なめと壁面全部を美学で埋めるものだ。絵画は壁面作品だ。壁面に作品が無いことによって、空間を作り作品を見せるということはなかなか至難の技だ。なのに鈴木悠高はあっさりと実行した。間違いなく空間を作りきった。讃辞を贈りたい。

 さて、その展示効果によって作品は2割ほど好得点を得るであろう。その心地良くゆがめられた目で、どれだけ素っ裸に作品が見れるのだろう?暗がりで、照明にあたった黄色は強められ、一際存在感を増すのだが、どうしたことか部屋全体が装飾の美学になってしまった。日本画的解釈をするならば、黒という余白に黄色い模様がてリズミカルに戯れているようだ。「作品だけを見よ」という強い作為が、何故だか逆に暗い空間に居ることだけで満足しがちになる。作品を見ていて、作品が消えているのだ。

 例えば、尾形光琳の有名な「燕子花(カキツバタ)図」がある。六曲一双という大画面だ。色は金箔地での花弁の青と葉の緑だけ。確かに描かれた燕子花や群生する姿は素晴らしい。だが、あの絵の良さは大広間に置かれた時に本来の美しさやリズムを発揮すると思う。燕子花は画面をはみ出して、広い畳の部屋で舞うのだ。絵としての燕子花が消えてしまう。その空間には障子があるだろう、廊下も、白砂が庭を清めてもいるだろう。一期一会的な倫理的会話も成り立つだろう。趣味人の集まりであっても生き生きとしているだろう。そのことを光琳は意識して描いている。

 光琳・燕子花と鈴木・黄色は、絵画効果において同じ結果をもたらした。
 だが、画家精神があまりにも違っている。
 名人芸的な花を描きながらも、くどさを消して色と形という装飾で空間を作ることをめざした光琳。
 絶対絵画をめざしながらも、装飾になってしまった鈴木ワールド。
 
 それはおそらく、鈴木悠高の黄色の質にあるのだろう。
 もし8枚の作品を3枚に省略したらどうなるだろう?たった1枚ならば?
 その軽く淡い黄色で、その数では装飾としてもパワーとしても空間に立ち向かえるか?

 ・・・

 今展の黄色には縦縞のストライプが明瞭に描き込まれている。その縞模様と黄色に挟まれるようにして、淡い緑の模様がしっかりと浮き出ている。それは「黄色だけ」にこだわっていた画家の新たなステップなのだろう。本来ならば、新たな作品傾向を語るべきなのだ。

 だが、ギリギリの展示方法は、鈴木絵画そのものの特徴を浮き彫りにしたようだ。浮き彫りにはしたが、僕はそれを楽しむばかりで、言葉にするにはまだまだ足りない。
 良き個展には良き言葉で対抗したいものだ。次への我が宿題でもある。
 
 

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     ↑:左から、「No.7 No.8」・2010年 F60(1303×970)。



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     ↑:(大作壁の向かい壁の風景。)     


 

by sakaidoori | 2010-12-18 23:43 | 時計台


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