見事な三味線だった。
津軽三味線風の響き。激しさを基調にはしているがむやみにスピードに溺れず、弦を強く弾いては、その音の裏側に、伴奏者でもいるかなようなわずかな音が流れている。音の2段弾きといい、なかなかのテクニシャンだ。
路上ライブとはいっても、ただなんとなく公園のベンチによしかかり、チョット音合わせ感覚という風情だ。
投げ銭用の置物もなく、聴いて良いのかどうかも戸惑ってしまう。めったに聴けれない路上三味線だし、腕も間違いなく良いから、ミニ・チャリンコに乗ったまま聴き入った。弾き終わると、その風情とは裏腹に「ありがとうございました」と、若くて明快な声での挨拶だ。拍手をしてはいけないのかと、退き腰気味の拝聴だった。聴き手を意識した元気な声に、いささか面食らってしまった。拍手もせずに失礼しました。
さて、次はどうなるのかなと様子を見ていると、やっぱり弦の音合わせから始まって、「チントンシャン」というお座敷雰囲気音が流れる。力んで聞き耳を注いでいたので、少し調子抜けしたが、直ぐにも音調は自立し始め、弦の弾きにも力が入る。スーピードも加わる。やはり再びというか、通奏低音風伴奏を伴いながら潮の満ち引きを感じさせるノリ具合だ。聴衆も僕意外にも数人加わり、圧巻のエンディングで皆の拍手で無事終了。奏者は間髪入れず、「ありがとうございました」。
もっと聴きたかったが、先もある事だし「さよなら」をしての別れだった。