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栄通記

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2010年 01月 23日

1167) ③テンポラリー 「森本めぐみ・展 『くものお』」 終了・12月15日(火)~2010年1月17日(日)

○ 森本めぐみ・展
   「くものお」


 会場:テンポラリー・スペース
     北区北16条西5丁目1-8
     (北大斜め通りの東側。
      隣はテーラー岩澤。)
     電話(011)737-5503

 会期:2009年12月15日(火)~2010年1月13日(水)17日(日)
 休み:月曜日(定休日) 年末年始 12月31日~1月4日
 時間:11:00~19:00

ーーーーーーーーーーーーーー(12・17&23 1・17)

 (1141番の①、1143番の②の続き。以下、敬称は省略させて頂きます。)

 13日に終了の展覧会ではあったが、予定通り17日まで延期された。次回開催展覧会のからみで、最終日が延期されるのは当館の慣例だ。

 二つの目的があって、どうしても最終日に行きたかった。
 一つは、公開制作の作品の最終段階を見ること。その作品がどういう展示をされているかも確認したい。
 一つは、個展初期の作品群は間違いなく居場所を変更されているだろう。それらがどういう扱いをされたかを見ること。公開作品の大きさから想像するに、正面の「糸巻き」作品がどう処理されるのかと思った。


 今展は3部構成だと思う。
 1部は、個展初期の静かなたたずまい(1141番の①で紹介)。
 いささかスキッパー気味で寂しい感じだが、完結性はあった。主役は「手作りの糸」だ。
 2部は、それまでの展示など、どこ吹く風という元気さで、密閉状態での公開制作。制作は演劇空間になり、主役は画き進む「森本めぐみ」と彼女の着ている「赤いつなぎ」。
 3部は、その作品を展示しての個展ルーム。当然主役は即興作品そのものだ。

 1部と2部とは断絶がある。画家はその脈路を「禁じ手」と語っていたが、それは画家の公式な言葉。僕はその言葉を全面的には肯定していない。意図的かどうかは明言できないが、無意識の心づもりはあったと思う。何故かと言うと、フライヤーに描かれていた飛行機や、タイトルの「くものお」の「雲」などが、1部の展示には皆無だった影が薄かったから。

 鑑賞者は全体の構想に関係なく、訪問した時の展示を楽しめば良いと思う。その瞬間が価値判断の全てだ。
 だが、たまたま数回訪問された愛好家は、即興作品だけに関心を向けないで、全体の作家の意志・美学にも思いをはせて欲しいところだ。それが発展・変化するインスタレーションの醍醐味だ。


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1167) ③テンポラリー 「森本めぐみ・展 『くものお』」 終了・12月15日(火)~2010年1月17日(日)_f0126829_0193067.jpg



 素晴らしい作品だと思う。
 今展は新聞にも紹介されたから、多くの人が訪れたことだろ。驚きのため息や賞賛、激励も多数あることだろう。
 僕は今展は多くを語った。この作品に関しては、画像を大きくして楽しんで下さい。

 さて、大作が壁に展示されたということは、「糸巻き」作品はその陰になったか、移動されたということだろう。

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 それらは窓際の棚にまとめられて山になっていた。個展初期ではおすましの展示物であったが、手に触れてもいい普通の存在になっていた。
 「糸巻き」が移動されたのではない。他の作品も、そこに有ってもも無くてもいい装飾物に格下げされた。それは仕方がないことだろう。これだけの大作が目の前にあれば、他の作品にどれほどの注意が行くかは疑問だ。

 僕は年末の「500m美術館」の森本作品を見た。人型のお守りであった。手のひらサイズの小さい作品群だったが、一つ一つに愛情を注ぐ画家の思いやりに感じたものであった。その人がスキッパー的でも「糸巻き」をお守りのようにして展示していた。、展覧会の良し悪しを離れて、その強いこだわりの姿勢に好感を持った。今、それらは有っても無くてもいい存在に化している。

 これだけの大作を短期間に集中的に画き上げたのだ。作家は満足感で一杯なのだろうか?
 僕は、今展はどこまでもプライベートな個展だと理解している。自分を、あの飛行機群のように飛び回るための舞台にしたのだと思う。自分とキャラクター人物との闘いかもしれない。犠牲にされたのは小さな「糸巻き」や「小物」類だろう。成長するための捨て石?女の子から女性への過渡期?わからない。
 他者の褒め言葉に反して、満足感と不満が入り乱れていることだろう。


1167) ③テンポラリー 「森本めぐみ・展 『くものお』」 終了・12月15日(火)~2010年1月17日(日)_f0126829_118799.jpg 最終日の訪問はひどい道路事情だった。江別から当館まで2時間以上もかかった。いささか疲れ気味で、画家との会話も、こちらからあれこれ言う元気が無かった。
 帰り際、奥の方で画家と当館オーナーの声が聞こえた。小さい声だが楽しそうに語らっている。その会話を中断させてはいけない雰囲気がした。ソーっと退席した。それでも画家は気が付いて、部屋から車に向かって軽く手を振っていた。長い闘いだったことだろう。もうすぐ展覧会は終わる。そして・・・、「くものお」が始まる。





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     (入り口右側の引き込み部分に展示されている、詩集の表紙の原画。今展の大作は、この原画が発展した感じに見える。)


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by sakaidoori | 2010-01-23 00:40 | テンポラリー


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